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大阪高等裁判所 平成3年(行コ)36号 判決 1994年7月15日

京都市右京区西院上花田町一〇番一

控訴人(附帯被控訴人・以下「控訴人」という)

右京税務署長 森垣省吾

右訴訟代理人弁護士

小藤登起夫

右指定代理人

手﨑政人

的場秀彦

蟻本平治

東昭生

京都市西京区大原野上羽町一〇番地の一二

被控訴人(附帯控訴人・以下「被控訴人」という)

山口光一郎

右控訴代理人弁護士

莇立明

脇田喜智夫

右複代理人弁護士

山下信子

主文

一  本件控訴に基づき、原判決中、被控訴人の昭和四六年及び昭和四七年の所得税について控訴人がした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に関する部分を取り消す。

二  右部分に関する被控訴人の請求を棄却する。

三  本件附帯控訴に基づき、原判決中、被控訴人の昭和四八年の所得税について控訴人がした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に関する部分を次のとおり変更する。

1  控訴人が昭和五〇年三月一二日被控訴人の昭和四八年分の所得税についてした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(但し、裁決による一部取消後のものをいう)のうち、総所得金額金二六八九万三九〇七円を超える部分を取り消す。

2  被控訴人のその余の請求を棄却する。

四  その余の本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は第一、二審を通じてこれを六分し、その五を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の申立

1  本件控訴

控訴人は、「原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

2  本件附帯控訴

被控訴人は、「原判決を次のとおり変更する。控訴人が被控訴人に対し、昭和五〇年三月一二日付でした昭和四六年ないし昭和四八年分各所得税の更正処分のうち、総所得金額につき、昭和四六年分は二九二万三二〇〇円、昭和四七年分は三三九万二〇〇〇円、昭和四八年分は五一〇万円をそれぞれ超える部分並びに右各年分の過少申告加算税の賦課決定処分(但し、昭和四八年分は各処分とも裁決による一部取消後のものをいう)をいずれも取り消す。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求め、控訴人は、「本件附帯控訴を棄却する。附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

第二当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり付加、訂正する外は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決六頁八行目の「所属職員らを」の次に「被控訴人事務所に」を加え、同七頁末行の「別表乙一の1ないし3」から同八頁初行末尾までを「事業所得金額に給与所得金額を加えたものであり、その金額は、本判決添付別表乙(当審)一の1ないし3の『総所得金額』欄に記載のとおりである。」と改め、以下の「別表乙一の1ないし3」も同様に「本判決添付別表乙(当審)一の1ないし3」と改める。

二  同九頁初行冒頭から同一一頁末行末尾までを次のとおり改める。

「その年毎の売上金額は、本判決添付別表乙(当審)一の1ないし3に記載のとおりであり、その物件別売上金額は、原判決添付別表裁二の1ないし9の『被告主張』欄記載のとおり(昭和四六年が同一及び2、昭和四七年が同3ないし6、昭和四八年が同7ないし9)である(但し、同表2の(8)-1の物件所在地欄に『(貸家修理)』を、同表6の(8)-4の物件所在地欄に『(長岡京市長法寺中畠一八-五の自宅追加工事及び『わかたけ』改装工事)』をそれぞれ追加記入し、同表4の(2)-8の買受人欄の『山田敏明』を『山田敏昭』と、同表5の(5)-8の買受人欄の『江頭英雄』を『江頭英隆』とそれぞれ改める。以下、各物件の表示は、同表の物件表示の記載による)。各売上金額の算出方法は次のとおりである。

(イ)  『算出方式区分』欄に『A』と表示されている物件の売上金額は、調査により把握した実額である(以下「A方式」という)。

(ロ)  同欄に『B』と表示されている物件の売上金額は、土地と建物の総額で売買契約が締結されている事例のうち、売上総額の実額が調査によって把握できたが、その内訳が把握できなかったものについて、土地に係る売上金額と建物に係る売上金額を推計して配分したものである。その配分方法は、まず建物に係る売上金額を推計し、売上総額から右推計額を減じて土地に係る売上金額とする方法を採った。建物に係る売上金額の推計は次の方法によった。即ち、A方式によって建物代金額が判明した六ケース((2)-7、9、12、(4)-1、3、4)から、各建物の一平方メートル当たりの売上単価を算出し、財団法人日本不動産研究所が発表している全国木造建築費指数を使用して、各建物について昭和四六年ないし同四八年の各三月期及び九月期における時点補正額を算出し、各期における各建物の売上単価の平均値をもって、各期における『平均的な建物一平方メートル当たりの売上価額』とし(原判決添付別表乙二を参照)、推計の目的たる建物の新築時期(各年度の上半期は三月期の価額を、下半期は九月期の価額を使用)における『平均的な建物一平方メートル当たりの売上価額』に床面積を乗じて求めた(原判決添付別表乙五の1を参照)(以下『B方式』という)。

(ハ)  同欄に『C』と表示されているのは(2)-10のみである。これもB方式の事例と同様、土地と建物の総額で売買契約が締結されていて、売上総額の実額は調査によって把握できたが、その内訳が把握できなかったので、土地に係る売上金額と建物に係る売上金額を推計して配分したものである。その配分方法は、建物に係る売上金額を推計し、右売上金額から右推計額を減じて土地に係る売上金額とする方法を採った。建物に係る売上金額の推計は次の方法によった。即ち、右事例は、A方式によって建物代金額が判明した(2)-9の事例と、場所が隣地であり、建築時期がほぼ同時期であるため、右事例における一平方メートル当たりの売上単価に(2)-10の床面積を乗じて求めた(原判決添付別表乙五の2を参照)(以下『C方式』という)。

(ニ)  同欄に『D』と表示されている物件((2)-2、(3)-2、(4)-2、(6)-1、(7)-8)の売上金額は、すべて推計による。その方法は次のとおりである。

即ち、建物については、A方式によって代金額が判明している類似の取引例((2)-2については(2)-5、(3)-1については(3)-2)がある場合には、その一平方メートル当たりの売上単価を、前記全国木造建築費指数を使用して時点補正をした金額に対象建物の床面積を乗じて求め、類似の取引例がない場合には、(ロ)で求めた『平均的な建物一平方メートル当たりの売上価額』に床面積を乗じて求めた。土地については、A方式によって代金額が判明している類似の取引例((2)-2については(2)-3ないし6、(3)-1については(3)-2、(6)-1については(6)-2)がある場合には、その一平方メートル当たりの単価((2)-2については(2)-3ないし6の平均値)に日本不動産研究所発表の全国市街地価格指数のうち、六大都市を除く地域別市街地価格指数(住宅地)(以下「市街地価格指数」という)によって時点補正をした(但し、(2)-2及び(6)-1については必要がないので右補正はしていない)金額に対象土地の地積を乗じて求め、類似の取引例がない(4)の2については、その土地の一平方メートル当たりの仕入単価(その算出方法は後記、原判決添付別表乙六の1の<4>-2参照)を市街地価格指数によって時点補正し、これに被控訴人の、当該期の『平均的な土地一平方メートル当たりの売買差益率』を使用して売却単価を求め、これに対象土地の地積を乗じて求めた(以上、原判決添付別表乙五の3を参照)。右売買差益率の算出は次の方法によった。即ち、A方式により土地の売上金額が判明した一一ケース((2)-3ないし6、8、9、12、(4)-1、3ないし5)から右各土地の一平方メートル当たりの売上価額を算出し、市街地価格指数を使用して昭和四六年ないし四八年の各三月期及び九月期での時点補正額(X)を算出し、他方、各土地の仕入単価(その算出方法は後掲、原判決添付物表乙六の1の<2>、<4>-1、2参照)も同様の方法によって各期毎の時点補正額(Y)を算出し、各期毎にXをYで除した数値から1を減じて各土地の各期毎の売買差益額を求め、その平均値をもって、『平均的な土地一平方メートル当たりの売買差益率』とした(原判決添付別表乙四の1、2参照、以下『D方式』という)。

(ホ)  同欄に『E』と表示されている物件は、いずれも西の京マンションの区分所有建物であり、調査によって売上総額の実額が把握できた事例について、土地に係る売上金額と建物にかかる売上金額とを推計により配分したものである。その配分方法は、まず土地に係る売上金額を推計し、売上総額から土地に係る売上金額を減じて建物に係る売上金額とした。土地にかかる売上金額の推計は、敷地の仕入れ金額から求めた一平方メートル当たりの単価を市街地価格指数を使用して時点補正し、これに当該期の『平均的な土地一平方メートル当たりの売買差益率』を使用して売却単価を求め、これに敷地面積及び各持分割合を乗じて算出した(以下『E方式』という)。

(ヘ)  同欄に『F』と表示されている物件は、(5)-1、2、13の三件であり、いずれも西の京マンションの区分所有建物であり、調査によっても売上総額の実額が把握できなかった事例である。この売買総額は右マンショッの同一フロアの他の物件の取引価格から推計し、土地に係る売上価格と建物に係る売上価格の配分については、E方式と同一の方法を採った(以下『F方式』という)。

(ト)  同欄に表示のない物件は(8)-5のみであり、これは、類似の取引例である(2)の7の単価に地積を乗じて推計したものである。」

三  同一二頁初行の「ハ」を「ロ」と改め、同二行目の「売上原価に」の次に「同業者の」を、同六行目末尾に続いて「及び建築」をそれぞれ加え、同九行目冒頭から同一〇行目末尾までを次のとおり改める。

「土地の仕入金額の明細は原判決添付別表乙六の1の記載のとおりであり、仕入金額は、取得金額、仲介手数料、造成費用、その他費用の合計額である。その各取得金額は、同表<6>の物件については推計したが、その余は調査によって把握した実額による。右推計は、同表<1>の2の物件の仕入単価で右物件を一部含む(1)-6の物件の販売単価を除して売上差益率を求め、同表<6>の物件の一部である(6)-2の物件の売上単価を右売上差益率で除し、これに市街地価格指数を使用して時点補正して取得単価を求め、これに対象土地の地積を乗じて取得価額を求めた(その詳細は、原判決添付別表六の2に記載のとおり)。仲介手数料及びその他費用は調査によって把握した実額による。造成費用は、同表<1>の1の物件については、共同購入者である丸岡益太郎が被控訴人に支払った造成費用に基づき、同表<2><3>の各物件については、右各土地の付近で同時期に造成した同業者の造成単価に基づき、同表<4>の1、2の各物件については、反面調査によって把握した右各土地付近の造成単価に基づき、それぞれ推計した(その詳細は、原判決添付別表乙六の3に記載のとおり)。

土地のたな卸の明細は、原判決添付別表乙七の1に記載のとおりである。

建物の売上原価は、売上額を同業者の平均原価率で乗じて算出した。」

四  同一三頁六行目の「経費率」を「同業者の平均経費率」と、同九行目冒頭から同一〇行目末尾までを次のとおりそれぞれ改める。

「家具についての算出所得金額は、売上金額に同業者の平均所得率を乗じて算出したから、家具についての必要経費の算定は不要である。」

五  同一七頁六行目の「以上のとおりの方法によって」を「右(2)、(3)の推計方法には合理性がある。また、(1)の方法によって」と、同末行の「事業所得金額」を「総所得金額」とそれぞ改め、同一八頁五行目末尾に続いて改行の上、「(三) 同(三)の事実を否認する。」を加え、同六行目の各「(三)」をいずれも「(四)」と、同行の「ハ」を「ロ」とそれぞれ改め、同八行目全部を削除する。

六  同一九頁末行の「(イ)(ロ)」を「(イ)ないし(ヘ)」と改め、同二〇頁四行目の「伊藤隆」の次に「(売上金額は認めるが、売上年度が誤り)」を、同行の「河音久子」の次に「(土地は認めるが、建物は誤り)」を、同五行目の「2の」の次に「(7)-1の丸岡益太郎、」を、同行の「黒川龍男」の次に「(売上の事実そのものがない)」を、同六行目の「奥田昭治」の次に「(建物は認めるが、土地が誤り)」を、同八行目の「福島環」の次に「(売上金額及び売上年度が誤り)」を、同行の「実額」の次に「及び売上年度」を、同一〇行目末尾に続いて「なお、控訴人がA方式で算定した物件のうち、その余の物件の売上年、売上金額は認める。」をそれぞれ加える。

七  同二一頁六行目の「乙」を「裁」と、同二二頁八行目の「各物件別」を「物件」と、同行の「裁二」を「裁二の7(2)-10」とそれぞれ改め、同九行目の「なお」から同一〇行目末尾までを削除し、同二三頁初行の「D方式は」から同三行目の「算出し、」までを「(4)-2の土地の売上金額の算出に当たって使用された『平均的な土地一平方メートル当たりの売買差益率』の算定の過程には次の問題点がある。即ち、」とそれぞれ改め、同九行目の「売上」から同一〇行目の「2)」までを削除し、同末行の「売上差益率」を「売買差益率」と、同二四頁三行目の「ものが混入している」を「数値となっている」とそれぞれ改め、同二五頁一〇行目の「とりわけ」から同二六頁二行目末尾までを削除する。

八  同二七頁二行目の「福島環分」の次に「、建物のみ」を加え、同三行目の「被告」を「被告主張」と、同六行目の「裁二の3」を「裁二の7」と、同七行目及び同末行の各「被告」をいずれも「被告主張」と、同二八頁二行目の「甲」を「乙」と、同三行目の「登記」を「小島テルへの所有権移転登記手続の受付日」と、同七行目の「被告」を「被告主張」とそれぞれ改める。

九  同二九頁初行の「前示」の次に「二2(四)(2)及び」を加え、同四行目の「<1>の」から同行の「土地の」までを「<1>-2の土地の」と、同三〇頁二行目の「原告は宇津から」を「被控訴人は」と、同二行目から三行目にかけての「一六番地二外二筆の田外」を「一六番二、一七番一、一八番一の三筆の田」とそれぞれ改め、同四行目の「メートル」の次に「(一六番二、一七番一の各全部及び一八番一の一部)」を加え、同七行目の「この」を「右三筆の土地の」と、同行の「農地転用許可」を「農地の転用を目的とする所有権移転の許可」と、同八行目の「行ったため」を「行なうこととし、そのため」とそれぞれ改め、同九行目の「原告名義に」から同末行の「転売した」までを「右許可を得た後、被控訴人名義に所有権移転登記手続をし、更に右一六番二及び一七番一の各土地を一八番一の土地に合筆した上で、黒川が買い受けた部分を同所一八番四の土地として分筆し、黒川がこれを第三者に転売した」と、同三一頁四行目の「借用して」から同行の「設定されている」までを「借用し、右一八番四の土地につき、同年五月六日受付で同銀行のために、債務者を黒川、極度額を二五〇〇万円、原因を同年四月一六日設定契約とする根抵当権設定登記が経由されている」と、同五行目の「甲第一六号証」を「甲第六六、六七号証」と、同六行目の「一八八・二一平方メートル」を「一八七七・二一平方メートル」とそれぞれ改める。

一〇  同三二頁五行目の「1」を「1、2」と、同行の「(B)」を「(A)(B)」とそれぞれ改め、同六行目の「実額は」の次に「A物件が三〇六万二三九〇円、B物件が」を加え、同七行目の「三三〇万円」と「三三〇万四一七二円」と、同三三頁六行目の「入金額」を「仕入金額」と、同八行目の「推計する」を「たな卸高を計算する」とそれぞれ改め、同三四頁三行目の「その」から同四行目の「算出し」までを削除する。

一一  同三四頁九行目冒頭から同行の「なした」までを「被控訴人がした」と、同末行の「は、」から三五頁五行目末尾までを「の提出は、原審における準備手続終結後の口頭弁論期日においてなされたものであるから、民事訴訟法二五五条一項によって右主張及び証拠の提出は許されない。」とそれぞれ改め、同三六頁四行目の「ないとしても、」の次に「被控訴人は原審における準備手続において、容易になしえた右主張及び証拠の提出をなさず、時間の経過により控訴人において事実確認が困難になった時期を狙ってこれらをなし、訴訟の遅延を招いたものであるから、民事訴訟法一三九条ないし訴訟上の信義則に照らして、これらの主張及び提出は許容すべきでない。仮に、これらが許容されるとしても、」と加える。

一二  同三七頁一〇行目の「(ハ)」を「(ニ)」と、同三八頁九行目及び同一〇行目から末行にかけての各「売上差益率」をいずれも「売買差益率」とそれぞれ改め、同三九頁六行目末尾に続いて「なお、仮に京都府への売買実例を除くべきであるなら、右基礎事例一一例中、推計の目的土地の近所である(4)-1、3、4の各土地の売買差益率の平均値をもって推計すべきである。」を加え、同八行目の「(a)」を「a」と、同四〇頁二行目の「(b)」を「b」と、同六行目の「(c)」を「c」と、同七行目の「伏見信用金庫の関係の」を「伏見信用金庫の」と、同一〇行目の「採用できない」を「不合理である」と、同末行の「(d)」を「d」をそれぞれ改め、同四一頁初行の「いうが、」の次に「伊藤隆を債務者、京都信用保証協会を根抵当権者とする」を加え、同二行目の「原告」を「伊藤隆」と改める。

一三  同四一頁五行目の「三2(2)」を「三2(ニ)(2)」と改め、同四二頁初行から二行目にかけての「甲第四六号証」を削除し、同一〇行目の「農地法の」を「農地法五条所定の所有権移転の許可の」と、同四三頁初行の「甲第六二号証の四」から同二行目の「入金は」までを「甲第六二号証の四(被控訴人の銀行取引関係の帳簿)の昭和四六年四月五日の欄の、摘要を『黒川様土地代金』とする金二〇〇万円の入金の記載は」と、同五行目から六行目にかけての「土地分は」を「土地分だけでは」と、同八行目の「二四九七万円」を「二四九七円」と、同一〇行目の「三九万〇三七〇円」を「三九万九三七〇円」とそれぞれ改め、同四四頁八行目の「されている」の次に「(同四番)」を加え、同四五頁初行の「(2)b」を「(2)ロ」と、同四六頁一〇行目の「入金額」を「仕入額」とそれぞれ改める。

第三証拠

証拠関係は、原審及び当審訴訟記録中の各証拠関係目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第一争いのない事実

請求原因一の(一)の事実は当事者間に争いがない。

第二準備手続終結後になされた被控訴人の実額主張の可否

一  控訴人は、準備手続終結後になされた被控訴人の実額主張は、民事訴訟法二五五条一項、一三九条ないし訴訟上の信義則に照らし、許されない旨主張するので検討するに、次の事実は、本訴訟手続上、明らかである。

1  原審裁判所は、第一回口頭弁論期日前の昭和五三年七月八日、本件を準備手続に付す旨決定し、右準備手続は同年九月二六日を第一回として期日が重ねられ、昭和五七年一月二一日の一六回期日において終結し、右期日において裁判官によって要約調書が作成された。

2  右準備書面手続において、被控訴人は、訴状の外、一一通の準備書面を陳述したが、右各書面において、本件各処分の違法事由として、請求原因の(二)の(1)ないし(4)の主張をし、控訴人の推計課税の必要性及びその合理性を争うとともに、各係争年度の土地及び建築の各売上総額、土地の売上原価総額、必要経費の各実額を主張したが、土地及び建築についての個別の物件毎の売上金額及び仕入土地の個別の価格については、控訴人の主張を否認するのみで、積極的にその金額の主張をしなかった。

3  準備手続終結後、昭和五七年四月一六日に第一回口頭弁論期日が開かれ、第二回口頭弁論期日(同年七月二日)から第六回口頭弁論期日(昭和五八年九月九日)において、推計課税の合理性等の立証のため控訴人申請にかかる証人の尋問がなされた後、第七回口頭弁論期日(同年一一月一八日)において、被控訴人から、個別の物件毎の売上金額の実額にかかる書証(甲三二ないし五九号証)が提出され、第八回口頭弁論期日(昭和五九年二月二日)において、被控訴人から初めて個別の物件毎の売上金額及び仕入価格の実額主張がなされるに至った。

原審裁判所は、被控訴人の右主張、立証を制限することなく許し、控訴人も、当初は、右主張、立証が許されることを前提として、右書証の信用性についての意見を陳述していたが、第一四回口頭弁論期日(昭和六〇年三月二〇日)に至って、控訴人の右主張、立証は民事訴訟法二五条一項により却下されるべきであるとの主張をなすに至った。

二  民事訴訟法二五五条一項によって失権効が及ぶのは、攻撃防御方法のすべてであると一応いうことができるが、従来否認していた事項につき、新たに積極否認事実を主張するのは、いずれにしても相手方においてその事実を立証する必要があることに変わりがないから、通常、それによって訴訟を著しく遅滞せしめるのではなく、失権の対象とはならないと解せられる。これに対し、抗弁ないし間接反証の主張は、新たな立証命題を提出するものであるから、これが失権の対象となることは明らかである。

三  ところで、本件において控訴人が主張する被控訴人の土地建築についての事業所得金額は、個々の売上物件毎に実額又は推計によって把握した売上金額を合計して売上総額を算出し、個々の仕入物件毎に実額又は推計によって把握した仕入価格に基づいて売上原価を算出し、更に売上総額に同業者の平均経費率を乗じて必要経費額を算出して求めたものであって、売上価格、仕入価格、経費額の各把握において推計が使われているところ、被控訴人はこれらのいずれに対してもその実額を主張している

そこで、控訴人が失権を主張する売上価格及び仕入金額についての被控訴人の実額主張が控訴上如何なる意味を持つかについて検討する。

本訴において控訴人がしている被控訴人の土地建築に関する個々の物件毎の売上金額の主張は、(1)実額を主張するもの(A方式)、(2)総額については実額を主張するが、土地価格と建築価格の内訳について推計するもの(B、C、E方式)、(3)推計金額を主張するもの(D、F方式)と多岐にわたっており、それに応じて被控訴人の実額主張が訴訟上持つ意味を変わってくる。即ち、(1)に対する実額主張、(2)の総額に対する実額主張は積極否認であるのに対し、(2)の内訳に対する実額主張は積極否認であるのに対し、(2)の内訳に対する実額主張、(3)に対する実額主張は、被控訴人が立証責任を負う抗弁ないし間接反証であると解せられる。また、A方式のうち、原判決添付別表裁二の4の(2)-7、9、7の(2)-12、1の(4)-1、3、4の各建物、3の(2)-3ないし6、4の(2)-8、9、7の(2)-12、1の(4)-1、4、5の各土地についての実額主張は、控訴人主張にかかるこれらの実額がB、D、F各方式の推計の基礎数値ともなっているから、右推計の合理性に対する積極否認事実との意味あいも持つことになる。

そうすると、(1)に対する実額主張、(2)の総額に対する実額主張が民事訴訟法二五五条一項により許されないと解することはできず、また本件訴訟の全経過に照らし、右各主張が同法一三九条ないし訴訟上の信義則に照らして許容できないと解することもできない。

次に、(2)の内訳に対する実額主張は、(2)の取引自体が土地と建物の総額でなされていたため、その内訳を立証する原始証拠が存在するわけではなく、その主張の根拠及び立証内容は、右内訳に関する売主たる被控訴人の当時の認識内容をいうにすぎず、実額主張の形式はとっているものの、その実体は内訳推計の合理性についての反論、反証と異ならないから、訴訟を著しく遅滞せしめないものと認められ、同法二五五条一項担書によって、これを許容すべきものというべきであるし、これが、同法一三九条ないし訴訟上の信義則に照らして許容できないと解することもできない。

これに対し、(3)に対する実額主張は、同法二五五条一項により失権効が及ぶ事項であり、これに伴って提出された原始証拠(甲三五、三六、三八等)に対して控訴人に再調査の必要が生じたから、右主張が訴訟を著しく遅滞せしめないのもということもできず、又、被控訴人は準備手続中に売上総額について実額に基づく主張をしていたことに照らすと、当時において個々の物件毎の売上実額を把握していたものと推測されるから、準備手続において右実額主張ができなかったことに重大な過失がないともいえない。そうすると、(3)に対する実額主張は、原審裁判所においてこれを却下すべきであったもので、当裁判所としてはこれを被控訴人の主張として取り上げてはならないものというべきである。

また、仕入価格の実額主張についても、控訴人が取得価格等を実額で主張するものに対する実額主張は、積極否認として許容すべきであるが、控訴人が推計により主張するものに対する実額主張は、抗弁ないし間接反証であって失権効が及ぶものと解せられる。

第三  本件において控訴人がした税務調査、更正の違法事由の存否、推計の必要性についての判断は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決六〇頁六行目冒頭から同六四頁七行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決六一頁六行目の「協力しなかったので」を「協力しなかったことが認められ、右事実によれば」と、同七行目から八行目にかけての「必要があることが認められ」を「必要があるというべきであり」とそれぞれ改める。

二  同六三頁二行目の「そして」から同五行目末尾までを次のとおり改める。

「そして、控訴人は、被控訴人の昭和四六年度から同四八年度の確定申告書に収入金額及び必要経費等の記載がないこと(乙第一ないし第三号証)等から、税務調査の必要があると判断したこと(弁論の全趣旨)、控訴人の調査担当職員は、第一回の臨場本人調査の際に、被控訴人に対し、『被控訴人が近年相当数の土地を分譲していることと確定申告の内容を比較検討すると、税務調査の必要が認められる』旨説明したこと(証人小原健吾の証言)及び一で認定した本人調査の経過に鑑みると、控訴人の調査担当職員が調査の事前通知、調査理由及び必要性の個別的、具体的な告知をしなかったとしても、被控訴人の本件税務調査の方法は社会通念上相当な限度に止まり、違法ではないというべきである。

第四被控訴人の総所得金額

そこで、被控訴人の昭和四六年度ないし四八年度の総所得金額についての控訴人の主張について検討する。

一  被控訴人の昭和四六年度ないし四八年度の総所得金額算出の要素のうち、家具に関する売上金額、売上原価及び売上総利益、建築の原価率が昭和四六年度が八五・三二パーセント、昭和四七年度が八六・六四パーセント、昭和四八年が八八・四一パーセントであること、利子割引料の金額並びに給与所得金額については、当事者間に争いがない。

二  そこで、以下、土地及び建築の売上金額について検討する。

1  A方式の物件について

控訴人がA方式で算定した物件三三件中、二一件については争いがなく、一二件については、売上金額、売上年度あるいは売買の事実そのものについて争いがある。そこで、以下、右一二件について、個別に検討する。

(一) 原判決添付別表裁二の1の(1)-2、3の(1)-2の買受人伊藤隆との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が伊藤隆との取引で、昭和四六年八月に土地の売却で金四〇〇万円、昭和四七年三月に建築で金四〇〇万円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、右売上はいずれも昭和四七年の売上であり、建築の売上は金三九〇万円である旨主張する。

(2) そこで検討するに、成立に争いのない乙第五号証の六、第六号証の四、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第三三号証、甲第三三、第三四、第六四、第一〇七号証及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

イ 被控訴人は、伊藤隆との間で、昭和四六年八月二七日、京都市右京区大原野上羽町一〇番一三・山林・一六五平方メートルの代金四〇〇万円で売り渡す旨の契約を締結した。同日作成された売買契約書(甲第三三号証)には、被控訴人が伊藤隆から、締結当日代金全額を受け取った旨の記載がある。

ロ 同日、被控訴人は伊藤隆との間で、右土地上での建物建築工事請負契約を代金三九〇万円で締結し、その旨の契約書(甲第三四号証)を作成したが、右契約書中には、特約条項として、「被控訴人が土地代金四〇〇万円を本日受領したので、建築請負代金の支払いについては伊藤が持家を売却する時点まで猶予する」旨の記載がある。

ハ 同日、右土地について、被控訴人から伊藤隆への同日売買を原因とする所有権移転登記及び根抵当権者を京都信用保証協会、債務者を伊藤隆、元本極度額を五〇〇万円とする根抵当権設定登記が経由され、昭和四七年一二月一四日、地上建物について同年三月一〇日新築を原因とする表示登記が経由された。

(3) 以上の事実が認められ、右事実によれば、被控訴人に右土地代金の入金があったのは昭和四六年であり、右建物の代金は金三九〇万円であったと認めるのが相当である。

これに対し、被控訴人は、伊藤が融資を受けるため、土地代金が未払いの状態で伊藤のために所有権移転登記をした旨主張し、証人高橋晴代の証言及び甲第六四号証(伊藤隆作成の証明書)中には右主張に沿う部分があるが、(2)ハで認定したように、昭和四六年八月二七日に伊藤を債務者とする根抵当権設定登記が経由されているから、そのころ伊藤が融資を受けたと推認できること及び前掲各証拠に照らすと、右部分だけでは右認定を左右するに足りない。

他方、控訴人は、右建物代金は金四〇〇万円であった旨主張し、乙第三三号証(国税審判官からの照会に対する回答書)中には右主張に沿う部分があるが、前掲各証拠に照らし、右部分は信用できない。

(二) 原判決添付別添表裁二の1の(4)-1の買受人川音久子との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が川音久子との取引で、土地の売却で金三四六万円、建築で金六二四万円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、土地代金は認めるものの、建築の売上は金五三四万円であった旨主張する。

(2) そこで検討するに、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる甲第三七号証、乙第四五号証によると、

イ 被控訴人と川音久子(契約書上は川音能平)は、昭和四六年一月ころ、代金五三四万円で建築請負契約を締結したこと

ロ しかし、最終的には川音久子は被控訴人に対し、右請負代金として金六二四万円を支払ったことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(3) よって、川音久子に対する建築の売上金額は金六二四万円と認めるのが相当である。

(三) 原判決添付別表裁二の1の(4)-4の買受人三浦圭一との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が三浦圭一との取引で、土地の売却で金四〇〇万円、建築で金三八二万四〇〇〇円、合計金七八二万四〇〇〇円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、合計金額については認めるものの、内訳について、土地が金三七四万四〇〇〇円、建築が金四〇八万円である旨主張する。

(2) そこで検討するに、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第四七号証によると、国税審判官の照会に対し、右三浦が、代金の内訳は土地が金四〇〇万円、建築が金三八二万四〇〇〇円である旨回答していることが認められ、右事実から控訴人主張事実を推認ことができる。

(3) これに対し、被控訴人は、自らの主張の立証として甲第五五号証を提出し、乙第二四号証(国税調査官小野原健吾ら作成のメモ)中にも被控訴人主張の裏付けとなる記載がある旨主張するが、甲第五五号証は被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎないし、乙第二四号証は右小原が右三浦の妻から聞き取った内容のメモであると認められる(証人小原健吾の証言)が、その聞き取り内容の正確性を判断するに足る資料がないので、いずれについても前記証拠の信用性を覆すに足りない。

(四) 原判決添付別表裁二の(7)-1の買受人丸岡益太郎との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が丸岡益太郎との建築請負で金一八八万六〇〇〇円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、売上金額は金一七八万円である旨主張する。

(2) そこで検討するに、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる甲第三九号証及び乙第六七号証並びに弁論の全趣旨によると、被控訴人は昭和四六年三月一三日丸岡益太郎との間で、代金一七八万円で建物建築請負契約を締結したこと、右建物は、同年八月ころ完成し、右丸岡は同年九月ころ被控訴人に対し右代金として金一八八万六〇〇〇円を支払ったことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(3) 以上の事実によれば、右丸岡に対する売上金額は金一八八万六〇〇〇円であったと認めるのが相当である。

(五) 原判決添付別表裁二の2の(8)-1の買受人丸岡益太郎との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が丸岡益太郎との家屋修理請負で金五万九四〇〇円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、右事実を争う。

(2) そこで検討するに、成立に争いのない乙第一五三号の一、二及び弁論の全趣旨によると、被控訴人は、昭和四六年一〇月ころ丸岡に対し、家屋修理代五万九四〇〇円及び以前の建築請負残代金八万円の支払いを請求し、丸岡は同一一月九日その内金一三万九〇〇〇円を支払ったことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(3) 以上の事実によれば、被控訴人は丸岡の家屋を修理し、金五万九四〇〇円の売上を上げたと推認するのが相当である。

(六) 原判決添付別表裁二の3の(2)-1の買受人黒川龍男との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が黒川龍男に対する京都府長岡京市長法寺中畠一八番四の土地(以下、土地について、「一八番四土地」等と地番のみで表すことがある)の売却で金三三一四万一〇五〇円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は右各売却の事実を否認し、右黒川は一八番四土地を宇津利三郎から買受けた旨主張する。

(2) そこで検討するに、成立に争いのない甲第六一、第六三、第六六ないし第六八号証、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる甲第四〇、第四九、第六〇号証、第一三六号証、乙第三七号証の一、二、第七二号証、証人高橋晴代の証言、右証言によって真正に成立したと認められる甲第六二号証の一ないし四、証人山下忠史の証言及び弁論の全趣旨によると次の事実が認められる。

イ 被控訴人は、昭和四五年一二月二三日、宇津利三郎との間で、宇津所有にかかる京都府長岡京市長法寺中畠一六番二・田・二三一平方メートル、同一七番一・田・一二四一平方メートル、同一八番一・田・一三五九平方メートルを、農地法五条所定の許可を条件に、代金八五六六万六〇〇〇円で買い受ける旨の契約を締結し、同日手付金一〇〇〇万円が支払われた。

ロ 被控訴人と宇津は、その後許可申請手続をし、昭和四六年三月一三日、京都府知事から右許可を得た。同年四月五日ころ、被控訴人は宇津に対して、中間金として金一五〇〇万円を支払った。

ハ 同年四月一六日、京都府西向日町の田口重雄司法書士事務所において右売買の決済がなされた。ところで、それより先、被控訴人は、右売買残代金の資金繰りがつかなかったことから、黒川龍男に金二八八〇万円の支払いについて協力を依頼し、右黒川との間で、買受予定の土地のうち黒川が支出する金員に相当する面積の土地(後に分筆される一八番四土地)につき、買受人たる地位を譲渡する旨の合意をしていた。右決済当日、右事務所で、宇津、被控訴人の事務員高橋晴代、黒川、黒川の取引金融機関である京都銀行山科支店の担当者、被控訴人の取引金融機関である伏見信用金庫向日町支店の担当者が集まり、高橋から宇津に対し、伏見信用金庫及び京都銀行を支払い場所とする額面二〇〇〇万円の小切手各一通が支払われた。黒川は京都銀行から融資を受けて、宇津に対し金二一〇〇万円を支払った。そして、これでは払い過払になるため、宇津から高橋に対し、金三三万四〇〇〇円が返還された。同時に、黒川と京都銀行は、右取引によって黒川の所有となるべき土地について、元本限度額を金二五〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結した。

ニ 同月二二日、右三筆の土地についての宇津から被控訴人への所有権移転登記、一六番二土地及び一七番一土地の一八番一土地への合筆登記、合筆後の一八番一土地(二八三二平方メートル)から一八番四土地(九五四平方メートル)の分筆登記がそれぞれなされ、一八番四土地については、同年五月六日、京都銀行のための、債務者を黒川、元本極度額を金二五〇〇万円、原因を四月一六日設定契約とする根抵当権設定登記が、同年六月五日、黒川のための四月一六日売買契約を原因とする所有権移転請求権仮登記がそれぞれ経由された。

ホ その後、被控訴人は右分筆後の一八番一土地及び一八番四土地全体について造成工事を進めた。同年一二月下旬ころ、黒川は奥村泰一との間で、一八番四土地のうち、北東端の一区画(後に分筆される一八番五土地、一二〇・四六平方メートル)について代金五八二万八八〇〇円で売買契約を締結した。同月二五日、一八番四土地から一八番五土地の分筆登記、一八番五土地について黒川の前記仮登記及び根抵当権設定登記の各抹消登記がなされ、昭和四七年一月五日、一八番五土地について被控訴人から奥村への所有権移転登記が経由された。

ヘ ところで、黒川は、昭和四六年一二月ころ、鍵谷木材株式会社に対し、一八番五土地を分筆する前の一八番四土地全体を代金四〇〇〇万円で売却する旨の話も進めており、同月一六日、その旨の売買契約書を作成し、手付金一〇〇〇万円を受け取っていた。しかし、ホで判示したように一八番五土地を奥村に売却してしまったため、鍵谷木材の了解を得て、売買の対象を一八番五土地を分筆した後の一八番四土地(八三四・三三平方メートル)とし、代金を金三四四六万六六九二円に減額した。そして、昭和四七年三月二四日、右一八番四土地について、黒川の前記仮登記及び根抵当権設定登記の各抹消登記、被控訴人から鍵谷木材への所有権移転登記がそれぞれ経由された。

(3) これに対し、控訴人は、一八番五土地の奥村への売買について、黒川の前記仮登記及び根抵当権設定登記の抹消が昭和四六年一二月二五日になされているのに対し、奥村への所有権移転登記が昭和四七年一月五日になされているのは、黒川の右仮登記が黒川の実質的な所有権を表象していないことを表していて、奥村に右土地を売却したのは登記簿の記載のとおり被控訴人である旨主張するが、証人山下忠史の証言によると、黒川の希望により所有権移転登記の日だけを翌年に遅らせたものと認められるから、控訴人の右主張は前記認定を左右するに足りない。

更に控訴人は、被控訴人の銀行帳(甲第六二号証の四)によると、昭和四六年四月五日、京都銀行の被控訴人の預金口座に金二〇〇万円の入金があり、その摘要欄は「黒川様土地代金」と記載されている事実が認められるところ、これは黒川が被控訴人から一八番四土地を買受けた代金の一部として支払ったものである旨主張するが、右記載だけから被控訴人主張事実を認めることはできない。

その他、前記認定を左右するに足る証拠はない。

(4) そして、(2)で認定した事実によると、黒川は、宇津との一八番一土地ほか二筆の売買において被控訴人との共同買受人として代金二八八〇万円を支払い、自らの出捐額に見合う一八番四土地の所有権を取得したというべきであって、一八番四土地の登記簿上は宇津から被控訴人に所有権が移転しているが、これは右判示の経緯、とりわけ農地法五条許可が被控訴人の名義でなされたことによるもので、黒川の右土地に対する所有権は前記所有権移転請求権仮登記によって表象されていたものと認められるから、被控訴人が一八番四土地を黒川に売却したとの控訴人主張事実は認めることができない(なお、売買契約の買主と第三者との間で買主たる地位の譲渡契約をしても、売主の承諾がない限り売主に対してはその効力を主張できないが、譲渡契約当時者間では、その契約の趣旨に即した法的効果を認めるのが相当である)。

(七) 原判決添付別表裁二の4の(2)-7の買受人奥田昭治との取引について

(1) 奥田昭治に対する建物の売却金額については当事者間に争いがない。控訴人は、被控訴人が奥田昭治に対する土地の売却で金三九〇万円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、右売上金額は金三七七万円である旨主張する。

(2) そこで検討するに、成立に争いのない乙第一五一号証によると、奥田は、京都銀行長岡支店に右土地の購入資金の融資を申し込んだ際、土地代金を三九〇万円として申し込んだ事実が認められ、右事実によれば、控訴人の奥田に対する土地の売却代金は金三九〇万円であったと推認することができる。これに対し、甲五七号証中には、右売却代金が金五七七万円であった旨の記載があるが、同号証は被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎないから、右認定を左右するには足りず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

(八) 原判決添付別表裁二の4の(2)-9、7の(2)-9の買受人福島環との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が福島環との取引で、昭和四七年八月に土地の売却で金六二〇万円、昭和四八年三月に建築で金四四〇万円、総額金一〇六〇万円の売上をした旨主張する。これに対し、被控訴人は、右総額は認めるものの、土地の売上が金六二九万円、建築の売上が金四三一万円であり、且つ建築の売上は昭和四七年の売上である旨主張する。

(2) そこで検討するに、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第四一号証によると、被控訴人は福島環に対する土地の売却で金六二〇万円、建築で金四四〇万円の売上をあげたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。また、右乙第四一号証及び成立に争いのない乙第一六四号証によると、建物について福島のための登記がなされたのは昭和四八年三月三一日であること、福島が右建物に転居したのが同月一日であることが認められ、右事実によれば、被控訴人が右建物の請負代金の支払いを受けたのは昭和四八年であると推認するのが相当であり、右認定を左右するに足る証拠はない。

(九) 原判決添付別表裁二の6の(8)-2の買受人今井明子との取引について

控訴人は、被控訴人が今井明子との建物請負で、金五〇〇万円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、右主張を争う。しかしながら、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第一五五号証の一、成立に争いのない同号証の二によると、控訴人の右主張事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(一〇) 原判決添付別表裁二の6の(8)-3の買受人京都府土地開発公社との取引について

控訴人は、被控訴人が京都府土地開発公社に対する土地の売却で、金二五万二四〇六円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、右主張を争う。しかしながら、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第一四七号証によると、控訴人の右主張事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(一一) 原判決添付別表裁二の6の(8)-4の奥村泰一との取引について

控訴人は、被控訴人が奥村泰一との建築請負(自宅追加工事及び『わかたけ』改装工事)で金一三七万一〇〇〇円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、右主張を争う。しかしながら、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第一四八号証によると、控訴人の右主張事実が認められ、右認定を左右する足る証拠はない。

(一二) 原判決添付別表裁二の7の(2)-12の玉井重幸との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が玉井重幸との取引で、土地の売却で金八三〇万円、建築で金六二九万六八五〇円、合計金一四五九万六八五〇円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、合計金額については認めるものの、内訳について、土地が金七一三万四九〇〇円、建築が金七四六一九五〇円である旨主張する。

(2) そこで検討するに、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第二一号証によると、控訴人主張事実が認められる。これに対し、被控訴人は、自らの主張の立証として甲第五七号証を提出するが、右は被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎないから右認定を左右しないし、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

2  B方式の物件について

(一) 控訴人がB方式で算定した物件一三件のうち、売上年度、売上総額には争いがなく、代金内訳にのみ争いがあるのが一〇件、代金内訳及び売上総額に争いがあるのが一件、代金内訳及び売上年度に争いがあるのが二件である。

そこで、まず、控訴人が内訳の推計方法の合理性について検討し、その後、個々の物件毎の売上金額等を検討することとする。

(二) 推計方法の合理性について

控訴人が採用した推計方法は、その内容に照らし、一応の合理性があるものと認められる。これに対し、

(1) 被控訴人は、控訴人が推定の基礎とした建物代金額のうち、(2)-9、12、(4)-1、4についての代金額は真実と異なる旨主張するが、1の(二)、(三)、(八)、(一二)で認定したとおり、控訴人が推定の基礎とした建物代金額は相当であると認められる。

(2) 被控訴人は、推定の基礎とした売上実例の選択が、(2)-5の買受人加藤倭彦の建築売上を除外するなど、恣意的である旨主張するが、加藤倭彦の建築売上と被控訴人が選択した売上実例との間に、売上単価において有意の差は認められないから、加藤倭彦の建築売上を推定の基礎に選択しなかったからといって、控訴人の選択が恣意的であるということはできないというべきである。

(3) 被控訴人は、被控訴人の住宅の建築は、いわゆる建売住宅ではなく、いわゆる注文建築であって、内装、設備、設計等について顧客に注文にしたがって建築する方式であるから、控訴人が推計によって算出した価額よりも実際の建築費は高額である旨主張するが、右主張によっても、控訴人の推計の基礎とした建築実例と推計の対象たる建築との間に如何なる相違があるのか明らかでなく、右主張はそれ自体で失当である。

よって、控訴人の右推計方法は合理的であるというべきであるが、控訴人が推計の基礎とした建築実例六例の単価自体が相当のばらつきを示している(原判決添付別表乙二参照)から、右推計を用いるに当たっては、その結果導き出される土地価格の妥当生にも考慮を払いつつ、慎重な判断が必要であると解される。

(三) 個々の物件毎の売上金額の検討

(1) 原判決添付別表裁二の1の(1)-1の小島テルとの取引について

イ 控訴人は、被控訴人が昭和四六年に、小島テルとの土地建物の取引で、総額金四五五万円の売上をあげ、そのうち建物の売上は金二八六万七九〇〇円と推計されるから、土地の売上は金一六八万二一〇〇円である旨主張する。これに対し、被控訴人は、小島テルに対する売上は昭和四五年度の売上である旨主張するので、以下検討する。

ロ 成立に争いのない乙第五号証の三、第六号証の一、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第三二号証、甲第三二号証によると、次の事実が認められる。

(イ) 被控訴人と右小島は、昭和四五年一〇月二三日、土地建物について代金四五五万円で売買契約を締結した。

(ロ) 土地については、昭和四六年一月二八日、控訴人から小島のための昭和四五年一二月一五日売買を原因とする所有権移転登記手続及び伏見信用金庫の抵当権設定登記(債務者全京都建設協同組合、債権額金四〇〇〇万円)の昭和四五年一二月一五日放棄を原因とする抹消登記手続が、建物については、同月一八日、所有権を小島とする表示登記が、同月二八日、小島のための保存登記がそれぞれなされた。

ハ 右事実によると、小島が昭和四五年一二月一五日に代金を支払い、被控訴人が同日これを伏見信用金庫に対する支払いに充てて右信用金庫から抵当権の放棄を得た(弁論の全趣旨によると、被控訴人は全京都建設協同組合の組合員であったことが認められる)が、その登記手続のみが何らかの事情で昭和四六年一月にずれ込んだのではないかとの合理的な疑いを払拭できないのであって、小島に対する売上が昭和四六年の売上であると認めることはできず、他に右事実を認めるに足る証拠はない。

(2) 原判決添付別表裁二の1の(1)-3の荻野昭男との取引について

イ 控訴人は、被控訴人が荻野昭男との土地(京都市西京区大原野上羽町一〇番一六、五五平方メートル)及びその地上建物(床面積六二・八九平方メートル)の取引で、総額金五〇〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上は金二七九万五〇八四円と推計されるから、土地の売上は金二二〇万四九一六円になる旨主張する。これに対し、被控訴人は、右売買の対象土地は、右一〇番一六土地の外に同所一〇番一四、四・〇二平方メートルも含まれ、売上総額は金四九〇万円であり、その内訳は、土地が金一四二万八二八四円、建築が金三四七万一七一六円である旨主張するので、以下検討する。

ロ 成立に争いのない乙第五号証の七、九、当第六号証の五によると、被控訴人が荻野に売却した土地は一〇番一六土地及び一〇番一四土地であることが認められ、また、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第三四号証によると、その代金総額が金五〇〇万円であった事実が認められる。そして、そのうちの建築にかかる売上金額の推計は合理的であると認められる。

ハ これに対し、被控訴人は、自らの主張の立証として甲第五四号証を提出するが、右書証は被控訴人が本訴提起後に作成したモメにすぎないから、右推計の合理性を覆すに足りない。

更に、被控訴人は、控訴人が売買の対象土地の面積が五五平方メートルである前提で推計しているから、その推計は不当である旨主張するが、控訴人の推計方法は、建物にかかる売上金額を推計し、売買総額から右推計額を差し引いた金額を土地に係る売上金額とするものであるから、土地の面積が直接その推計結果に影響を与えるものではなく、被控訴人の右主張には左袒できない。

もっとも、その結果導き出される土地の売上価格の妥当性にも考慮を払うべきではあるが、控訴人の推計にかかる荻野の土地の売上単価(一平方メートル当たり金三万七三五九円・一円未満四捨五入、以下の計算においても、特に断らない限り同様である)が不相当であるとまで認めるに足る証拠はない。なお、控訴人の右推計額を、右土地の隣地である後期の(3)の被控訴人が買受人大槻栄太郎に売却した土地の売上推計額と比較すると、売上時期がほぼ同時期で、土地面積は大槻が購入した土地が三・六八平方メートル広いのに、売上金額が同額であり、この点においていささか不合理な感は免れないが、これは荻野に対する取引と大槻に対する取引とが、売買総額及び建物の床面積が同一であるのに、土地面積のみが異なることから生じる結果であり、建物の価額に差があることを認めるに足る証拠もなく、土地面積の差も僅かであるから、右の程度の不合理さをもって前記推定の合理性を覆すには足りないというべきである。

(3) 原判決添付別表裁二の1の(1)-4の大槻栄太郎との取引について

イ 控訴人は、被控訴人が大槻栄太郎との土地(京都市西京区大原野上羽町一〇番一七、五八平方メートル)及びその地上建物(床面積六二・八九平方メートル)の取引で、総額金五〇〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上は金二七九万五〇八四円と推計されるから、土地の売上は金二二〇万四九一六円になる旨主張する。これに対し、被控訴人は、右売買の対象土地は、右一〇番一七土地の外に同所一〇番一五、四・七〇平方メートルも含まれ、売上総額は認めるものの、その内訳は、土地が金一五一万七三八〇円、建築が金三四八万二六六〇円である旨主張するので、以下検討する。

ロ 成立に争いのない乙第五号証の八、一〇、同第六号証の六によると、大槻に売却した土地は一〇番一七土地及び一〇番一五土地であることが認められるが、建築にかかる売上金額の推計は合理的なものと認められる。

ハ これに対し、被控訴人は、自らの主張の立証として甲第五四号証を提出するが、右書証は被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎないから、右推計の合理性を覆すに足りない。

更に、被控訴人は、控訴人が売買の対象土地の面積が五八平方メートルである前提で推計しているから、その推計は不当である旨主張するが、右主張には(2)で判示したと同じ理由で左袒できない。

もっとも、その結果導き出される土地の売上価格の妥当性にも考慮を払うべきではあるが、控訴人の推計にかかる大槻の土地の売上単価(一平方メートル当たり金三万五一六六円)が不相当であるとまで認めるに足る証拠はない。

(4) 原判決添付別表裁二の2の(6)-2の仲野三郎との取引について

イ 控訴人は、被控訴人が仲野三郎との土地(六四・一六平方メートル)及びその地上建物の取引で、総額金五五〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金三一七万五〇八〇円と推計されるから、土地の売上は金二三二万四九二〇円になる旨主張する。これに対し、被控訴人は、売上総額は認めるものの、その内訳は、土地が金二一三万四〇〇〇円、建築が金三三六万六〇〇〇円である旨主張するが、控訴人の右推計の結果は合理的なものと認められる。

ロ これに対し、被控訴人は、自らの主張の立証として甲第五八号証を提出するが、右書証は被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎないから、右推計の合理性を覆すに足りない。更に、被控訴人は、右土地が一方向でしか道路に面していないのに対して、その推計額の単価が、近隣地で角地である後記の買受人今村健三に対する土地の売上価格((6)-2)の推計額(金二四四万八四六六円)の単価よりも高額であるのは不合理である旨主張するが、これは、今村が購入した土地の面積が控訴人主張の六七・五七平方メートルではなく七二平方メートルであることを前提とする主張であるところ、なるほど甲三八号証(昭和四五年一〇月五日付契約書)中には今村が購入した土地の面積が七二平方メートルであるとの記載があるが、成立に争いのない乙第一一号証の二によれば、その後今村への売却のため現実に分筆された面積が六七・五七平方メートルであったことが認められ、そうであれば、今村購入土地の単価と仲野購入土地の単価はほとんど同額であると認められるから、被控訴人の右主張はその前提において採用できない。

(5) 原判決添付別表裁二の3の(1)-5の山本正彦との取引について

イ 控訴人は、被控訴人が山本三郎との土地及びその地上建物の取引で、総額金五五〇〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金二九八万八九一一円と推計されるから、土地の売上は金二五一万一〇八九円である旨主張する。これに対し、被控訴人は、売上総額は認めるものの、その内訳は、土地が金一五七万二八〇〇円、建築が金三九二万七二〇円である旨主張するが、控訴人の右推計の結果は合理的なものと認められる。

ロ これに対し、被控訴人は、自らの主張と立証として甲第五四号証を提出するが、右書証は被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎないから、右推計の合理性を覆すに足りない。更に、被控訴人は、右土地が一方向でしか道路に面していないのに対し、その推計額の単価(一平方メートル当たり金三万八六三二円)が、隣地で角地である前記(3)の買受人大槻栄太郎に対する土地の売上価格の推計額の単価(一平方メートル当たり金三万五一六六円)よりも高額であるのは不合理である旨主張するが、大槻に対する売上が昭和四六年であるのに対し、山本に対する売上が昭和四七年であることに鑑みると、これを不合理であるとまでいうことができない。

(6) 原判決添付別表裁二の3の(1)-6の西村昌夫との取引について

イ 控訴人は、被控訴人が、西村昌夫との土地及びその地上建物の取引で、総額金五三三万円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金二九八万八九一一円と推計されるから、土地の売上は金二三四万一〇八九円になる旨主張する。これに対し、被控訴人は、売上総額は認めるものの、その内訳は、土地が金一五九万三六〇〇円、建築が金三七三万六四〇〇円である旨主張するが、控訴人の右推計の結果は合理的なものと認められる。

ロ これに対し、被控訴人は、自らの主張の立証として甲第五四号証を提出するが、右書証は被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎないから、右推計の合理性を覆すに足りない。更に、被控訴人は、右土地の推計額の単価(一平方メートル当たり金三万六〇一七円)が、近所である前記1の(一)の買受人伊藤隆に対する土地の売上実額の単価(一平方メートル当たり金二万四二四二円)と比較して不相当に高額である旨主張するが、伊藤に対する売上が昭和四六年であるのに対し、西村に対する売上が昭和四七年であることに鑑みると、これを不合理であるとまでいうことはできない。

(7) 原判決添付別表裁二の5の(6)-3の伊藤英吉との取引について

イ 控訴人は、被控訴人が、伊藤英吉との土地及びその地上建物の取引で、総額五六〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金三一七万五〇八〇円と推計されるから、土地の売上は金二四二万四九二〇円である旨主張する。これに対し、被控訴人は、売上総額は認めるものの、その内訳は、土地が金二一二万八二六九円、建築が金三四七万一七三一円である旨主張するが、控訴人の右推計の結果は合理的なものと認められる。

ロ これに対し、被控訴人は、自らの主張の立証として甲第五八号証を提出するが、右書証は被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎないから、右推計の合理性を覆すに足りない。更に、被控訴人は、右土地が一方向でしか道路に面していないのに対し、その推計額の単価(一平方メートル当たり金三万八〇三二円)が、隣地で角地である後記の買受人今村健三に対する土地の売上価格の推計額の単価よりも高額であるのは不合理である旨主張するが、被控訴人は、今村が購入した土地面積が控訴人主張の六七・五七平方メートルではなく七二平方メートルであることを前提として主張しているところ、今村の購入土地の面積を六七・五七平方メートルであると認めるべきこと(4)で判示したとおりであり、右面積を前提とする今村購入土地の単価は一平方メートル当たり金三万六二三六円となってその差は僅かであり、しかも今村の購入年度は昭和四六年であるのに対し、伊藤の購入年度が昭和四七年であることにも鑑みると、これを不合理ということはできない。

(8) 原判決添付別表裁二の3の(1)-7及び同7の(1)-7の林清との取引について

イ 控訴人は、被控訴人が林清との土地及びその地上建物の取引で、昭和四八年に総額金五九〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金三一一万〇七九一円と推計されるから、土地の売上は金二七八万九二〇九円である旨主張する。これに対し、被控訴人は、売上総額は認めるものの、売上時期は昭和四七年であり、その内訳は、土地が金一六〇万円、建築が金四三〇万円である旨主張するが、控訴人の右推計の結果は合理的なものと認められ、また成立に争いのない乙第五号証の一一、第六号証の七、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる同第一三号証によると、右売上時期は昭和四八年一月であると認めるのが相当である。

ロ これに対し、被控訴人は、内訳に関する自らの主張の立証として甲第五四号証を提出するが、右書証は、被控訴人が本訴提起後に作成したメモに過ぎないから、右推計の合理性を覆すに足りない。更に、被控訴人は、右土地の推計額の単価(一平方メートル当たり金四万二六四二円)が、近所である前記1の(一)の買受人伊藤隆に対する土地の売上実額の単価(一平方メートル当たり金二万四二四二円)と比較して不相当に高額である旨主張するが、伊藤に対する売上が昭和四六年であるの対し、林に対する売上が昭和四八年一月であることに鑑みると、これを不合理であるとまでいうことはできない。

(9) 原判決添付別表裁二の7の(1)-8の幡富三との取引について

イ 控訴人は、被控訴人が幡富三との土地及び地上建物の取引で、総額金九五〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金三八六万一五七二円と推計されるから、土地の売上は金五六三万八四二八円である旨主張する。これに対し、被控訴人は、売上総額は認めるものの、その内訳は、土地が金三〇〇万円、建築が金六五〇万円である旨主張するので、以下検討する。

ロ 幡購入土地は(8)の林購入土地の隣地であり、形状、面積もほぼ同一であると認められる(甲第五四号証)ところ、林購入土地の一平方メートル当たりの単価は金四万二六四二円であるのに対し、幡購入土地の控訴人推計にかかる売上の右単価は金八万四一五五円になり、幡が右土地を購入したのが昭和四八年八月で、林の購入よりも七か月遅いことを考慮しても、右単価の較差はあまりに甚だしく、控訴人のB方式の推定方法は、幡との取引に適用する限りにおいて不合理であると言わざるを得ない。

もっとも、被控訴人の主張額もこれを認めるに足る証拠がないから(甲第五四号証は、被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎず、右主張を立証するに足らない)、被控訴人の推計方法を基礎にしつつ、その結果が不合理でないように修正するのが相当である。

そして、土地価格よりも建物価格のほうが個別性が強いこと、その他本件に顕れた諸般の事情に鑑み、「平均的な建物一平方メートル売上価額」の昭和四八年三月期における時点補正額の平均値(切上額・金六万一四〇二円)の一・五倍(金九万二一〇三円)をもって幡の建物の単価と認めるのが相当である。すると、幡の建物価格は五七九万二三五八円と推計され、土地価格は金三七〇万七六四二円(一平方メートル当たりの単価金五万五三三八円)となる。

(計算式) 92,103×62,89=5,792,352.6

(10) 原判決添付別表裁二の7の(2)-11の田辺歳孝、(2)-13の矢本工業株式会社、(2)-14の市田晧一郎、(2)-15の藤井信次との各取引について

イ 控訴人が、被控訴人は、田辺歳孝との土地及びその地上建物の取引で、総額金二四五一万八九〇〇円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金一〇〇三万六三五四円と推計されるから、土地の売上は金一四四八万二五四六円であり、矢本工業株式会社との土地及びその地上建物の取引で、総額金一一〇〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金四三八万二八七五円と推計されるから、土地の売上は金六六一万七一二五円であり、市田晧一郎との土地及びその地上建物の取引で、総額金一〇三〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金四二九万〇七七二円と推計されるから、土地の売上は金六〇〇万九二二八円であり、藤井信次との土地及びその地上建物の取引で、総額金一〇八〇万円の売上をあげ、そのうち建物の売上が金四三八万二八七五円と推計されるから、土地の売上は金六四一万七一二五円である旨主張するのに対し、被控訴人は、各売上総額は認めるものの、その内訳は、田辺歳孝との取引については土地が金一〇五八万九四〇〇円、建築が金一三九二万九五〇〇円、矢本工業株式会社との取引については土地が金四七一万八〇〇〇円、建築が金六二八万二〇〇〇円、市田晧一郎との取引については土地が金四四六万円、建築が金五八四万円、藤井信次との取引については土地が金四七一万八〇〇〇円、建築が金六〇八万二〇〇〇円である旨主張するが、控訴人の右推計の結果はいずれも合理的なものと認められる。

ロ これに対し、被控訴人は、自らの主張の立証として甲第五七号証を提出するが、右書証は被控訴人が本訴提起後に作成したメモにすぎないから、右推計の合理性を覆すに足りない。更に、被控訴人は、右各土地の推計額の一平方メートル当たりの単価(田辺歳孝に売却した土地については金七万四四六四円、矢本工業株式会社に売却した土地については金八万四八四六円、市田晧一郎に売却した土地については金八万一五二五円、藤井信次に売却した土地については金八万二八六六円)が、同一分譲地内の近所で被控訴人が売却した土地の一平方メートル当たりの単価(その金額に争いのない(2)-3の福西市郎に売却した土地については金四万七五九〇円、(2)-4の津田章良に売却した土地については金四万七四四二円、(2)-5及び(2)-6の加藤倭彦に売却した各土地については金五万一三一九円及び五万一二八二円等)と比較して、不相当に高額である旨主張するが、右田辺ら四名に対する売上が昭和四八年五月ないし一一月であるのに対し、右福西らに対する売上がいずれも昭和四七年五月ないし六月であることに鑑みると、これが不相当に高額であって控訴人の推計が不合理であるとまではいうことができない。

3  C方式の物件について

控訴人がC方式で売上金額を算定したのは原判決添付別表裁二の7の(2)-10の多田清之助に対する取引のみであり、控訴人が、被控訴人は多田との取引で総額金一〇六五万五〇〇〇円の売上をあげ、そのうち建物に係る売上が、金四五六万二七二四円と推計されるから、土地に係る売上は金六〇九万二二七六円となる旨主張するのに対し、被控訴人は売上総額は認めるものの、その内訳は、土地が金六一〇万二二七六円、建物が金四五五万二七二四円である旨主張する。

しかしながら、売上総額に争いない場合、その内訳は、建物価格が高いほど被控訴人にとって有利である(原価率が明らかに建物のほうが高い)から、被控訴人が控訴人主張額以下の建物価格しか主張しないのであれば、弁論全趣旨により、被控訴人主張の建物価格の推計の合理性を認めるのが相当である。

4  D方式の物件について

控訴人がD方式で算定した物件五件については、いずれも売上金額ないし売上の事実そのものについて争いがあるが、控訴人の売上金額の推計方法がそれぞれ異なるので、個々の物件毎に売上の事実の有無ないし売上金額の推計の合理性を検討することとする。

(一) 原判決添付の別表裁二の1の(3)-1の奥村泰一との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が右奥村に土地、建物を売却し、土地について金一一六二万七三九六円、建物について金一五六一万一一九三円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、土地に係る売上が金七七〇万円、建物に係る売上が金一二八〇万円である旨主張する。

(2) 控訴人は、建物価格については右取引と類似の取引例(同表7の(3)-2の買受人安井一夫)にかかるものの一平方メートル当たりの売上価格に、全国木造建築費指数を使用して時点補正をした金額に床面積を乗じて求め、土地価格については、右取引例の一平方メートル当たりの単価に市街地価格指数によって時点補正をした金額に地積を乗じて求めたものであって、右推計方法は合理的であると認められる。

(3) これに対し、被控訴人の右主張及びそれを裏付ける証拠(甲第三五、三六号証等)は、第二の三で判示したとおり準備手続の失権効により主張、立証が許されないものであると解せられるから、右主張については判断しない。

(二) 原判決添付別表裁二の1の(4)-2の渡辺則夫との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が右渡辺に土地、建物を売却し、土地について金三三〇万三三七三円、建物について金三四〇万七五四一円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は土地に係る売上が金三一九万五〇〇〇円、建物に係る売上が金三一〇万円である旨主張する。

(2) 控訴人は、建物価格については、B方式において推計の基礎とした『平均的な建物一平方メートル当たりの売上価額』に床面積を乗じて求めたもので、右推計は合理的なものと認められる。

(3) 控訴人は、土地価格については、その土地の一平方メートル当たりの仕入単価金一万五四七六円(その算出方法は後記四の6の(一)参照)を市街地価格指数によって時点補正した金一万九五三六円に、被控訴人の、当該期の『平均的な土地一平方メートル当たりの売買差益率』四四・一九パーセントを使用して売却単価を求め、これに右土地の地積を乗じて求めた(原判決添付別表乙五の3を参照)もので、右売買差益率は、A方式により土地の売上実額が把握できた一一事例((2)-3ないし6、8、9、12、(4)-1、3ないし5)から右各土地の一平方メートル当たりの売上価額を算出し、市街地価格指数を使用して昭和四六年ないし四八年の毎年三月期及び九月期における売上価格の時点補正額(X)を算出し、他方、各土地の仕入単価(その算出方法は後掲、原判決添付別表乙六の1の<2>、<4>-1、2参照)も同様の方法によって各期毎の時点補正額(Y)を算出し、各期毎にXをYで除した数値から1を減じて各土地の各期毎の売買差益率を求め、その平均値をもって、『平均的な土地一平方メートル当たりの売買差益率』としたものである(原判決添付表乙四の1、2参照)。

ところで、右土地価格の推計方法については、被控訴人からそれが不合理であるとして具体的な主張があるので、これを検討する。

イ まず被控訴人は、右売買差益率算定の基礎とした一一事例中、(4)-4、(2)-12の事例の土地価格は真実と異なる旨主張するが、右土地価格については被控訴人主張どおり認められること前判示(1の(三)、(一二))のとおりであるから、被控訴人の右主張は理由がない。

ロ 次に被控訴人は、控訴人の基礎事例の選択は、(1)-2、(2)-7、(8)-3、(3)-2、(4)-6の事例を理由なく除外する等恣意的である旨主張するが、これが恣意的で、これらを除外した推計が不合理であるとまで認めるに足る事情はない。

ハ 次に被控訴人は、控訴人が基礎事例の中に特殊な売買である(4)-5の事例を加えたのは不合理であって、これを除くべきである旨主張するところ、当裁判所も被控訴人の右主張は是認すべきであると判断する。その理由は原判決一〇〇頁四行目から一〇三頁九行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

なお、控訴人は、仮に(4)-5の事例を基礎事例から除くべきであるとすれば、むしろ、右基礎事例一一例中、(4)-2の土地の近所である(4)-1、3、4の各土地の売買差益率の平均値をもって(4)-2の土地価格を推計すべきである旨主張するところ、成立に争いのない甲第一〇三号証によると、なるほど(4)-2の土地と(4)-1、3、4の各土地は近接していることが認められるが、他方、(4)-2の土地は直接町道に面しているのに対し、(4)-1、3、4の各土地はいずれも造成地内の私道(その後被控訴人が長岡町に寄付した)を通って右町道とは別な道に通じているなど宅地としての条件に無視できない相違点があることが認められ、推計のための基礎事例は多いほどより客観性が担保されることは見易い道理であることにも鑑みると、控訴人の右主張には左袒できない。

以上の次第で、被控訴人の右推計方法は、基礎事例から(2)-5の事例を除くべきであること意外は合理的であると認められる。

ところで、右基礎事例土地の仕入単価についての当裁判所の認定額が後に判示するとおり、被控訴人主張額と異なるので、右認定額を前提に平均的な土地一平方メートル当たりの売買差益率を求めると、別表裁(当審)一記載のとおり、三六・〇六パーセントとなる(なお、控訴人は、各期毎の売買差益率を求めているが、その計算方法自体から、どの期も誤差を除いて同じ値になることが明らかであるので、各物件について実際に売上があった期についてのみ売買差益率を求めた)。

そうすると、渡辺則夫に対する土地の売上は金三一一万七一一六円と推計するのが相当である。

(計算式) 19,536×117.27×(1+0.3606)=3,117,116.5

(4) なお、被控訴人主張については証拠がない。

(三) 原判決添付別表裁二の2の(6)-1の今村建三との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が右今村に土地、建物を売却し、土地について金二四四万八四六六円、建物について金三一六万九四六〇円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、土地に係る売上が金二三九万五八〇〇円、建物に係る売上が金二六〇万四二〇〇円である旨主張する。

(2) 控訴人は、建物価格について、B方式において推計の基礎とした『平均的な建物一平方メートル当たりの売上価額』に床面積を乗じて求めたもので、右推計は合理的なものと認められる。

(3) 控訴人は、土地価格については右取引と類似且つ同時期の取引例(同表2の(6)-2の買受人仲野三郎にかかるもの)の一平方メートル当たりの売上価格三万六二三六円に地積を乗じて求めたものであって、右推計方法は合理的であると認められる。

(4) これに対し、被控訴人の右主張及びそれを裏付ける証拠(甲第三八号証)は、第二の三で判示したとおり準備手続の失権効により主張、立証が許されないものであると解せられるから、右主張については判断しない。

(四) 原判決添付別表裁二の3の(2)-2の奥村泰一との取引について

(1) 控訴人は、被控訴人が右奥村に土地(長岡京市長法寺中畠一八番五)及び建物を売却し、土地について金五九五万一五六七円、建物について金四〇〇万二四一二円の売上をあげた旨主張する。これに対し、被控訴人は、右土地を売却した事実を否認し、建物に係る売上は四八三万五〇〇〇円である旨主張する。

(2) 右土地については、被控訴人が奥村に売却したものと認めることができない。かえって、第四の二の1の(六)の(2)のホで認定したように、右土地は黒川龍男が奥村に売却したものと認められる。

(3) 控訴人は、建物価格については右取引と類似の取引例(同表3の(2)-5の買受人加藤倭人にかかるもの)の一平方メートル当たりの売上価格四九六八四円に、全国木造建築費指数を使用して時点補正をした金額(四万七七三三円)に床面積八三・八五平方メートルを乗じて求めたものであって、右推計方式は合理的であると認められる。

(4) これに対し、建物価格についての被控訴人の右主張及びそれを裏付ける証拠(甲第六〇号証)は、第二の三で判示したとおり準備手続の失権効により主張、立証が許されないものであると解せられるから、右主張については判断しない。

5  E方式の物件について

控訴人がE方式で算定した物件は、西の京マンションの区分所有建物二〇件中の一七件であり、調査によって把握できた売上総額の実額を、推計により土地に係る売上金額と建物にかかる売上金額とに配分したものである。その配分方法は、まず土地に係る売上金額を推計し、売上総額から土地に係る売上金額を減じて建物に係る売上金額とし、土地にかかる売上金額は、敷地の仕入れ金額から求めた一平方メートル当たりの単価を市街地価格指数を使用して時点補正し、これに前記の『平均的な土地一平方メートル当たりの売買差益率』を使用して売却単価を求め、これに持分割合を乗じて算出したものである。

被控訴人は、一七件中、二件については売上総額とその内訳を、五件については売上年と内訳を、その他の一〇件については内訳を争う。そこで、以下総額に争いのある二件について、その総額について検討し、次に売上年に争いのある五件について売上年について検討し、最後に全件について、内訳の推計の合理性について検討することとする。

(一) 原判決添付別表裁二の4の(5)-4の北村喜代子控訴人に対する三階D号室についての取引及び8の(5)-16の森本戴般に対する四階A号室についての取引について

(1) 控訴人は、北村喜代子に対する売上総額は金五七〇万円である旨主張し、その証拠として代金が五七〇万円と記載された昭和四六年一一月二五日付契約書(乙第二六号証)を提出するのに対し、被控訴人は、代金は金三八〇万円であり、乙第二六号証は北村が購入代金の融資を受けるために代金を水増しして作った虚偽の契約書である旨主張し、その証拠として、代金が金三八〇万円と記載された同日付契約書(甲第四三号証)及び右主張に沿う北村喜代子作成の証明書(甲第六五号証)を提出する。控訴人は、右甲四三号証は、売上金額の圧縮のために作成された虚偽の契約書である旨主張する。

そこで検討するに、西ノ京マンションの各室の床面積はいずれも同一であるところ(弁論の全趣旨)、北村と同じ階の他の物件の価格をみるに、三階C号室(買受人大谷謙二、契約は昭和四七年五月、決済は同年一一月)及び三階B号室(買受人水戸清、決済は同年九月)の各代金がいずれも金四三〇万円であったこと、北村の契約と同時期に契約された物件の価格をみると、被控訴人が昭和四六年一一月二五日に小林進に売却した(決済は昭和四七年八月)四階D号室の代金が三七〇万円であること(契約日は成立に争いのない乙第二九号証、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第五六号証の二によって認定、その余の事実は当事者間に争いがない)等の事実に鑑みると、被控訴人主張の代金額が右各物件の代金額と釣り合うのに対し、控訴人主張の代金額は右各物件の代金額と比較して余りに高価であり、特段の事情のない限りそのような代金で売却されることは考えがたいところ、右特段の事情を認めるに足る証拠はない。

そうすると、北村に対する代金額が被控訴人主張のように金五七〇万円であったとは認めがたく、かえって、控訴人主張のように金三八〇万円であったと認めるのが相当である。

(2) 控訴人は、森本戴般に対する四階A号室の売上総額は金六〇〇〇万円である旨主張し、その証拠として代金が六〇〇万円と記載された昭和四八年五月一日付契約書(乙第五九号証)を提出するのに対し、被控訴人は、代金は金四四五万円であり、乙第五九号証は森本が購入代金の融資を受けるために代金を水増しして作った虚偽の契約書である旨主張し、その証拠として、代金が金四四五万円と記載された同年三月二二日付契約書(甲第四五号証)を提出する。控訴人は、右甲四三号証は、売上金額の圧縮のために作成された虚偽の契約書である旨主張する。

そこで検討するに、西ノ京マンションの二〇戸は昭和四八年中に完売になったものであるが、その代金額は、控訴人の主張によっても、森本に対する金六〇〇万円と(1)北村に対する金五七〇万円を除くと、最も高額なもので金四八〇万円であって、北村に対する代金額を金三八〇万円と認定すべきこと前判事のとおりであるから、森本に対する控訴人の主張代金額は突出しており、特段の事情のない限り、そのような代金で売却されることは考えがたいところ、右特段の事情を認めるに足る証拠はない。他方、森本に対する売買と同時期に売却された五階A号室(買受人泉義彦)、五階B号室(買受人堂本茂)、五階C号室(買受人行實順助)、五階D号室(買受人太秦秀男)の各代金額はいずれも金四二〇万円ないし四五〇万円であること(争いがない)に鑑みると、被控訴人主張額は釣合いのとれた金額であるから、森本に対する代金額は被控訴人が主張するように金四四五万円であったと認めるのが相当である。

(二) 次に、売上年について争いのある五件について、その売上年を検討することとする。

(1) 控訴人は、(5)-10の川村吉弘に対する一階B号室の売上、(5)-11の北浦正樹に対する二階A号室の売上、(5)-12の石村侔に対する二階B号室の売上、(5)-14の水戸輝雄に対する三階B号室の売上、(5)-15の高尾勇に対する四階B号室の売上はいずれも昭和四八年の売上である旨主張するのに対し、被控訴人は、右各売上は昭和四七年の売上である旨主張する。

(2) しかしながら、成立に争いのない乙第二八、第一五二号証、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第五二ないし五四号証及び第五七号証よると、右売上はいずれも昭和四八年の売上であると認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(三) 次に、一七件全部について、控訴人がした土地価格と建物価格の内訳に関する推計の合理性について検討する。

(1) 控訴人は、まず土地価格を推計し、売上総額から土地価格を減じて建物価格としている。そしてその土地価格は、敷地(後に四の8で判示する京都府長岡京市井ノ内西の京一四番四四、六八・九四平方メートル及び同番四五、二七七・六三平方メートル、以上合計三四六・五七平方メートル)の仕入れ金額から求めた一平方メートル当たりの単価(後に四の8で判示する金一万五四七六円)を市街地価格指数を使用して時点補正し、これに当該期の『平均的な土地一平方メートル当たりの売買差益率』を使用して売却単価を求め、これに敷地に対する持分割合(いずれの買受人についても二〇分の一)を乗じて推計している

(2) 右の内訳の算出方法及び土地価格の推計方法は合理的なものと認められる。但し、売買差益率は、4の(二)の(3)で判示したように、三六・〇六パーセントを用いるべきである。

そうすると、一七件のうち、昭和四七年の売上分六件はいずれも下半期の売上であるので、土地価格が金五三万四三五四円と推計できる(但し、敷地の仕入時期に近接している昭和四六年三月期の市街地価格指数が一三九三、昭和四七年九月期の市街地価格指数が二〇四〇)。

(計算式)15,476÷1393×2040×1.3606×346.57÷20=534.354.1

同様に、昭和四八年上半期の売上九件の土地価格は金六三万〇七四七円と、同下半期の売上二件の土地価格は金六三万〇二二四円とそれぞれ推計できる(但し、昭和四八年三月期の市街地価格指数が二四〇八、昭和四八年九月期の市街地価格指数が二四〇六)。

(計算式)15,476÷1393×2408×1.3606×346.57÷20=630,747.4

(計算式)15,476÷1393×2406×1.3606×346.57÷20=630,223.6

(3) そうすると、各売上額は次のとおり認定すべきことになる。

イ 原判決添付別表裁二の4の(5)-3の板倉泰明に対する売上(二階C号室)

売上総額金四四〇万円(争いがない)

土地価格金五三万四三五四円、建物価格金三八六万五六四六円

ロ 原判決添付別表裁二の4の(5)-4の北村喜代子に対する売上(三階D号室)

売上総額金三八〇万円((一)の(1)で判示したとおり)

土地価格金五三万四三五四円、建物価格金三二六万五六四六円

ハ 原判決添付別表裁二の4の(5)-5の水戸清に対する売上(三階A号室)

売上総額金四三〇万円(争いがない)

土地価格金五三万四三五四円、建物価格金三七六万五六四六円

ニ 原判決添付別表裁二の4の(5)-6の大谷謙二に対する売上(三階C号室)

売上総額金四三〇万円(争いがない)

土地価格金五三万四三五四円、建物価格三七六万五六四六円

ホ 原判決添付別表裁二の4の(5)-7の小林進に対する売上(四階D号室)

売上総額金三七〇万円(争いがない)

土地価格金五三万四三五四円、建物価格金三一六万五六四六円

ヘ 原判決添付別表裁二の4の(5)-8の江頭英隆に対する売上(四階C号室)

売上総額金四一〇万円(争いがない)

土地価格金五三万四三五四円、建物価格金三五六万五六四六円(昭和四八年上半期の売上分)

ト 原判決添付別表裁二の8の(5)-9の和泉頌二に対する売上(一階A号室)

売上総額金四八〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金四一六万九二五三円

チ 原判決添付別表裁二の8の(5)-10の川村吉弘に対する売上(一階B号室)

売上総額金四八〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金四一六万九二五三円

リ 原判決添付別表裁二の8の(5)-11の北浦正樹に対する売上(二階A号室)

売上総額金四四〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金三七六万九二五三円

ヌ 原判決添付別表裁二の8の(5)-12の石村侔に対する売上(二階A号室)

売上総額金四四〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金三七六万九二五三円

ル 原判決添付別表裁二の8の(5)-14の水戸輝雄に対する売上(三階B号室)

売上総額金四三〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金三六六万九二五三円

ヲ 原判決添付別表裁二の8の(5)-15の高尾勇に対する売上(四階B号室)

売上総額金四五〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金三八六万九二五三円

ワ 原判決添付別表裁二の9の(5)-18の堂本茂に対する売上(五階B号室)

売上総額金四二〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金三五六万九二五三円

カ 原判決添付別表裁二の9の(5)-19の行實順助に対する売上(五階C号室)

売上総額金四四〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金三七六万九二五三円

ヨ 原判決添付別表裁二の9の(5)-20の太秦秀男に対する売上(五階D号室)

売上総額金四四〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金三七六万九二五三円

(昭和四八年下半期の売上分)

タ 原判決添付別表裁二の8の(5)-16の森本戴般に対する売上(四階A号室)

売上総額金四四五万円((1)の(1)で判示したとおり)

土地価格金六三万〇二二四円、建物価格金三八一万九七七六円

レ 原判決添付別表裁二の8の(5)-17の泉義彦に対する売上(五階A号室)

売上総額金四五〇万円(争いがない)

土地価格金六三万〇二二四円、建物価格金三八六万九七七六円

6  F方式の物件について

控訴人がF方式で算定した物件は、西の京マンションの区分所有建物二〇件中残り三件であり、調査によって売上総額が把握できなかったものについて、売買総額を右マンションの同一フロアの他の物件の取引価格から推計し、土地に係る売上価格と建物に係る売上価格の配分については、E方式と同一の方法により推計したものである。そこで、以下検討する。

(一) 原判決添付別表裁二の4の(5)-1の矢野稜夫に対する売上(一階D号室)、同(5)-2の小滝以和生に対する売上(一階C号室)がいずれも昭和四七年の売上であることは当事者間に争いがないところ、控訴人は、その売上総額について、1階のA号室及びB号室(売上年はいずれも昭和四八年)の売上額と同額の金四八〇万円と推計し、同8の(5)-13の宇野廸男(二階D号室)に対する売上が昭和四八年の売上であることは当事者間に争いがないところ、控訴人は、その売上総額について、二階のA号室ないしC号室(売上年はC号室が昭和四七年、その余は昭和四八年)の売上額と同額の金四四〇万円と推計しているところ、右推計は合理的であると認められる。

これに対し、被控訴人は、右売上総額は矢野稜夫に対しては金四二〇万円、小滝以和生に対しては金四三〇万円、宇野廸男に対しては金四三〇万円であると主張し、その証拠として甲第四一、第四二、第四四号証(いずれも契約書)を提出するが、右主張、立証は第二の三で判示したとおり準備手続の失権効により許されないものであると解せられるから、右主張については判断しない。

よって、右各売上総額は矢野稜夫及び小滝以和生に対してはいずれも金四八〇万円、宇野廸男に対しては金四四〇万円と認めるのが相当である。

(二) 次に、その内訳についてはE方式と同一の方法で推計するのが相当である。そうすると、その結果は次のようになる。

(1) 矢野稜夫に対する売上(一階D号室)

売上総額金四八〇万円

土地価格金五三万四三五四円、建物価格金四二六万五六四六円

(2) 小滝以和生に対する売上(一階C号室)

売上総額金四八〇万円

土地価格金五三万四三五四円、建物価格金四二六万五六四六円

(3) 宇野廸男に対する売上(二階D号室)

売上総額金四四〇万円

土地価格金六三万〇七四七円、建物価格金三七六万九二五三円

7  表示のない物件について

原判決添付別表裁二の9の(8)-5の奥田昭治に対する土地の売却金額について、控訴人は金一九万五〇〇〇円であると主張するところ、被控訴人はこれを争うが、控訴人は、類似の取引例である(2)の7の単価に地積に乗じてこれを推計しており、右推計は合理的なものと認められる。

8  まとめ

以上検討したところにしたがって、被控訴人の土地建物の売上金額を集計すると、物表裁(当審)二のとおり、昭和四六年は土地が金三八八二万一八九二円、建築が金六六三〇万八一四二円、昭和四七年は土地が金三二四五万八三三六円、建築が金八七三三万四六八九円、昭和四八年は土地が金七〇一七万六九二九円、建築が金一億二二三七万二六八一円となる。

三  土地に関する売上原価について

1  控訴人は、被控訴人の土地に関する売上原価を、期首たな卸高にその年の仕入高を加えた金額から期末たな卸高を減じて算出しているところ、被控訴人も右算出方法自体については異議を述べないから、これを合理的なものと認める。

控訴人は、被控訴人の昭和四六年の期首たな卸高が金四〇二〇万一六七四円、同年の仕入が一億〇二八四万三九五〇円、同年期末(昭和四七年期首)たな卸高が金一億二三七二万八二五二円、昭和四七年の仕入が金一〇六万八〇〇〇円、同年期末(昭和四八年期首)たな卸高が金六六九八万三四九六円、昭和四八年の仕入が零、同年期末のたな卸高が金三三〇二万三七七七円である旨主張するので、以下、個々の仕入土地毎に検討する。

2  被控訴人が上羽義雄から購入した京都市西京区大原野上羽町の土地(原判決添付別表乙七の1の<1>-1、乙六の1の<1>-1参照)

(一) 上羽町の土地の仕入価格について

被控訴人が右土地を昭和四三年に仕入たことは当事者間に争いがない。

控訴人は、右土地の仕入価格は、取得価格金一三八〇万二〇〇〇円、仲介手数料金五六万三〇〇〇円、造成費用金二九一万四六五二円、その他費用金二五〇〇円の合計金一七二八万二一五二円である旨主張するところ、被控訴人はそれを超える仕入金額の主張をしないので、右土地の仕入価格は金一七二八万二一五二円であると認めるのが相当である。

(二) 弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第四八号証によると、右土地の仕入面積は一七〇八平方メートルであったと認められるから、一平方メートル当たりの仕入単価は金一万〇一一九円となる。

(三) 成立に争いのない乙第五号証の一ないし一四(一部は前掲)、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第五四、第一〇一号証及び弁論の全趣旨によると、被控訴人は、次のとおり右土地を一四区画の宅地に造成してこれを分譲したことが認められ、その合計面積は一三八七・五二平方メートルであるから、有効宅地割合(全面積中に宅地面積が占める割合)は八一・二四パーセント(少数第三位以下四捨五入)となる。

<省略>

(後記3の土地の一部二七平方メートルを合筆の上、六五平方メートルの土地として西村に売却した)

<省略>

(後記3の土地の一部三二平方メートルを合筆の上、六七平方メートルの土地として西村に売却した)

<14> 未売却地 二八一・〇〇

(四) 前記末たな卸面積から、期中に売却した面積を有効宅地割合で除した面積を減じたものを期末たな卸面積とし、これに仕入単価を乗じたものを期末たな卸高とするのが相当である。

そうすると、昭和四五年ないし四八年の各期末たな卸高は次のとおりとなる

(1) 昭和四五年期末たな卸高 金九六〇万五九六七円

(計算式) 1708-〔(71+133.49+72+69.9+191+79)÷0.8124〕≒949.27

949.3×10.119=9605966.7

(2) 昭和四六年期末たな卸高 金六〇三万四九七二円

(計算式) 949.3-〔(165+59.02+62.7)÷0.8124〕≒596.37

596.4×10,119=6034971.6

(3) 昭和四七年期末たな卸高 金四七五万一八八二円

(計算式) 596.4-〔(65+38)÷0.8124〕≒469.61

469.6×10,119=4751882.4

(4) 昭和四八年期末たな卸高 金三五〇万一一七四円

(計算式) 469.3-〔(65.41+35)÷0.8124〕≒346.00

346.0×10,119=3501174.0

3  被控訴人が丸岡益太郎から購入した京都市西京区大原野上羽町一〇番二二、同番二三の各土地(原判決添付別表乙七の1の<1>-2、乙六の1の<1>-2参照)

(一) 右土地の仕入価格について

被控訴人が右土地を昭和四七年に仕入れたことは当時者間に争いがない。

控訴人は、右土地の仕入価格は、取得価格金一〇六万八〇〇〇円のみである旨主張するのに対し、被控訴人は、右土地の仕入価格として計上すべきものは取得価格だけであることは認めるものの、右取得価格は金一七八万四〇〇〇円である旨主張するので検討する。

弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる甲第四六、第四七、第一一一号証によると、被控訴人は昭和四七年三月二二日、丸岡益太郎から右土地を代金一七八万四〇〇〇円で買い受け、代金は後日の請負代金と精算する旨の合意をしていたが、昭和四八年八月三日、丸岡との間で、丸岡を発注者、被控訴人を請負人、代金を一一五二万四〇〇〇円とする建物建築工事請負契約を締結し、同日支払うべき第一回の分割金の一部と右売買代金を相殺したことが認められる。これに対し、乙第六八、第七〇号証中には控訴人の主張に沿う部分もあるが、前掲各証拠に照らし、右部分は採用できない。

なお、前掲甲第四六号証、乙第五号証の一三、一四によると、右土地の面積は五九平方メートルであると認められるから、その一平方メートル当たりの仕入単価は金三万〇二三七円となる。

(二) 右土地の昭和四七年、四八年の各期末たな卸高は次のとおりである。

(1) 被控訴人は、昭和四七年三月二四日、右土地のうち一〇番二二の土地(三二平方メートル)を同所一〇番二〇の土地に、一〇番二三の土地(二七平方メートル)を同所一〇番二一の土地にそれぞれ合筆し、同年三月三〇日、合筆後の同番二一の土地を西村昌夫に((1)-6)、昭和四八年八月二九日、合筆後の一〇番二〇の土地を幡富三に((1)-8)それぞれ売却した。

(2) したがって、昭和四七年の期末たな卸高は金九六万九六〇一円、昭和四八年の期末棚卸高は零円である。

(計算式) 1,784,000-(30,237×27)=969,601

4  被控訴人が宇津利三郎から購入した長岡京市長法寺中畠の土地(原判決添付別表乙七の1の<2>、乙六の1の<2>参照)

(一) 右の土地の面積、取得価格について

被控訴人が右土地を昭和四六年に仕入れたことは当事者間に争いがない。

控訴人は、被控訴人が、宇津から当所一六番二、一七番一、一八番一の三筆の土地(合計二八三二平方メートル)を代金八五六六万六〇〇〇円で購入した旨主張するのに対し、被控訴人は、自ら買い受けたのは、一八七八平方メートル、代金は五六七六万六〇〇〇円にすぎず、他の九五四平方メートルは黒川龍男が直接宇津から買い受けたものである旨主張するところ、控訴人の右主張事実が認められず、被控訴人の右主張事実が認められることは、二の1の(六)で判示したとおりである。

(二) 右土地の仕入価格について

右土地の仲介手数料に金二〇五万円を要したことは当事者間に争いがない。次に造成費用につき、控訴人は、同時期に右土地の近隣の土地をぞうせいした三越土地株式会社が、一平方メートル当たり金二四九七円の造成費用を要した(乙第七四号証の一、二)ことから、右土地の一平方メートル当たりの造成費用単価を同額と推計していることろ、右推計は合理的であると認められる。そして、その金額は金四六八万九三六六円となる。

(計算式) 1,878×2,497=4,689,366

これに対し、被控訴人は、黒川購入土地も含めて金五三七万一二〇〇円の造成費用を要したと主張し、甲一一二号証中には右主張に沿う部分もあるが、右書証は、本訴提起直前に被控訴人の従業員である高橋晴代が作成したメモにすぎず、右推計の合理性を覆すに足りない。

更に、被控訴人は、その他の費用として金三九万九三七〇円を要した旨主張し、その証拠として甲第一一二号証を提出するが、右主張、立証は、第二の三で判示したとおり準備手続の失権効により許されないものであると解せられるから、右主張について判断しない。

よって、右土地の仕入価格は、金六三六〇万五三六六円、一平方メートル当たりの仕入単価は金三万三八六九円となる。

(三) 前掲甲第六六ないし六八号証、成立に争いのない甲第六九ないし九五号証、乙第七号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第五七号証及び弁論の全趣旨によると、被控訴人は右土地(京都府長岡京市長法寺中畠一八番一、登記簿上の地積一八七七平方メートル)から、同番一三ないし一七、二〇ないし二五、二七ないし三三を、そのうちの同番二四から同番二六をそれぞれ分筆し、これらを次のとおり分譲し、また一部の土地は隣接地主に譲渡したことが認められ、その合計面積は、一六七三・五五平方メートルであるから、有効宅地割合は八九・一六パーセント(少数第三位以下四捨五入)となる。

<省略>

(四) そうすると、昭和四六年ないし四八年の各期末たな卸高は次のとおりとなる。

(1) 昭和四六年期末たな卸高 金六三六〇万五三六六円

(2) 昭和四七年期末たな卸高 金四八七六万七〇五八円

(計算式) 1877-〔(33.62+15.05+98.8+78+65.55+122.44)÷0.8916〕≒1413.27

1413.3×33,869=47,867,057.7

(3) 昭和四八年期末たな卸高 金二一六四万五六七八円

(計算式) 1413.3-〔(124+194.49+137.46+1.3+3.9+77.99+73.11+77.44)÷0.8916〕≒639.08

639.1×33,869=21,645,677.9

5  被控訴人が野勢一から購入した京都府長岡京市今里野添一丁目三四番一等の土地(原判決添付別表乙七の1の<3>、乙六の1の<3>参照)

(一) 右土地の仕入価格について

右土地の取得時期が昭和四六年であること及び取得価格が金六三二万五〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。控訴人は、右土地の仲介手数料が金一〇万円であり、その他の費用として金五〇〇〇円を要した旨主張するところ、これは、野勢が右土地の売買についての仲介手数料として金一〇万円を、その他の費用として金五〇〇〇円を支払った(乙第七三号証)ことから、被控訴人が支払った仲介手数料及びその他の費用も同額であると推計したものであって、右推計は合理的であると認められる。また、控訴人は、造成費用が金一六二万六四四六円であった旨主張するところ、これは、同時期に右土地の近所の土地を造成した三越土地株式会社が、4の(二)で判示したように、一平方メートル当たり金二四九七円の造成費用を要した(乙第七四号証の一、二)ことから、右土地の一平方メートル当たりの造成費用単価もこれと同額とみなして右造成費用を推計したものであって、これも合理的であると認められる。

これに対し、控訴人は、仲介手数料は金一二万七五〇〇円、造成費用が金二五六万一六二四円である旨主張し、甲一一二号証中には右主張に沿う部分もあるが、右書証は、本訴提起直前に被控訴人の従業員である高橋晴代が作成したメモにすぎず、右推計の合理性を覆すに足りない。更に被控訴人は、その他の費用(不動産取得税)として金二万五三五〇円を要した旨主張し、その立証として甲第一〇九号証を提出するが、右主張、立証は、第二の三で判示したとおり準備手続の失効権により許されないものであると解せられるから、右主張について判断しない。

よって、右土地の仕入価格は、金八〇五万六四四六円、一平方メートル当たりの単価は金一万二三六九円と認められる。

(二) 成立に争いのない乙第八号証の一ないし四によると、次の事実が認められる。

(1) 被控訴人は、昭和四六年一〇月、右土地のうち三四番三の土地(三二九・五〇平方メートル)を奥村秦一に売却した((3)-1)。

(2) 被控訴人は、昭和四八年四月、右土地のうちの三四番四の土地(一四七・七五平方メートル)を安井一夫に売却し((3)-2)、同年五月、右土地のうち同番五の土地(一・三五平方メートル)を右奥村に贈与した。

(三) よって、昭和四六年、昭和四七年の各期末たな卸高は金三九八万〇八六一円、昭和四八年の期末たな卸高は金二一三万六六四三円である。

(計算式) 8,056,446-(12,369×329.50)=3,980,860.5.

3,980,861-〔12,369×(147.75+1.35)〕=2,136,643.1

6  被控訴人が岡本彦三郎及び岡本武彦から購入した京都府乙訓郡長岡町大字井ノ内小字川原四番地、同所四番地の一、同所二八番地の8の日(以下「西の京A物件」という)について(原判決添付別表乙七の1の<4>-1、乙六の1の<4>-1参照)

(一) 右土地の仕入価格について

右土地の取得時期が昭和四四年五月であること、取得価格が金一〇一〇万八〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。控訴人は、右土地の仲介手数料が金二〇万円であり、その他の費用として金一五〇〇円を要した旨主張するところ、これは、岡本彦三郎が右土地の売買の仲介手数料として金二〇万円を、岡本武彦がその他の費用として金一五〇〇円を支払った(乙第七五、第七六証)ことから、被控訴人が支払った仲介手数料及びその他の費用も同額であると推計したものであって、右推計は合理的であると認められる。また、控訴人は、造成費用が金一三三万二〇〇〇円であった旨主張するところ、これは、右京税務署の資産税係の職員が、昭和四六年九月、右土地付近の造成費を調査したとこ、畑については一坪当たり約金五〇〇〇円との結果が出た(乙第八一号証、証人元屋実の証言)ので、右単価を本件土地の地積に乗じて本件土地の造成費用を推計した(甲五〇及び弁論の全趣旨によると、右土地の現況は、当時、畑ないしそれに準ずるものであったと認められる)もので、これも合理的であると認められる。

これに対し、被控訴人は、仲介手数料及びその他の費用については控訴人主張を超える主張をしないが、造成費用については金三〇六万二三九〇円である旨主張し、甲一一二号証中には右主張に沿う部分もあるが、右書証は、本訴提起直前に被控訴人の従業員である高橋晴代が作成したメモにすぎず、本推計の合理性を覆すに足りない。

よって、右土地の仕入価格は、金一一六四万一五〇〇円であり、その面積は八七九・一二平方メートルである(乙第一〇号証)から、一平方メートル当たりの単価は金一万三二四二円と認められる。

(二) 成立に争いのない乙第一〇号証及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

(1) 被控訴人は、昭和四五年四月七日、四番地土地に四番地の一、二八番地の八土地を合筆し、右合筆後の土地から、同日長岡京市井ノ内西ノ京一四番二六土地を、同年六月二五日、同所一四番二七ないし三一土地を分筆した。また元番の土地は一四番一六土地と表示が変更された。

(2) 被控訴人は、昭和四五年末までに、右各土地のうち、二六番ないし二八番、三一番の各土地を売却し、昭和四六年七月、一六番土地(一一七・二七平方メートル、(4)-2)を売却した。他の二筆〔二九番土地(地積は八九・三六平方メートル)、三〇番土地(地積は一九四・六九平方メートル)〕は、昭和四八年末までには売却されなかった。

(三) よって、西の京A物件について、昭和四五年の期末たな卸高は金五三一万四二七九円、昭和四六年ないし昭和四八年の各期末たな卸高はいずれも金三七六万一三九〇円である。

(計算式) 13,242×(117.27+89.36+194.69)=5,314,279.4

5,314,279-(13,242×117.27)=3,761,389.6

7  被控訴人が岡本彦三郎、岡本武彦及び石田喜一郎から購入した京都府乙訓郡長岡町大字井ノ内小字川原三番地の九、同番地の一〇、同所五番地、同所二八番地の一〇の各土地(以下「西の京B物件」という)について(原判決添付別表乙七の1の<4>-2、乙六の1の<4>-2参照)

(一) 右土地の仕入価格について

右土地の取得時期が昭和四五年五月であること、取得価格が金二一四六万一〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。控訴人は、右土地の仲介手数料が金四一万円であり、その他の費用として金五〇〇〇円を要した旨主張するところ、これは、岡本彦三郎が右土地の売買の仲介手数料として金二六万円を、石田喜一郎が右手数料として金一五万円及びその他の費用として金五〇〇〇円を支払った(乙第七七、第七八、第八〇号証)ことから、被控訴人が支払った仲介手数料及びその他の費用も同額であると推計したものであって、右推計は合理的であると認められる。また、控訴人は、右土地の造成費用が金二三七万四一二二円であった旨主張するところ、これは、前判示の右京税務署の資産税係の職員の調査による造成単価を本件土地の地積に乗じて本件土地の造成費用を推計した(甲第五一ないし五三号証及び弁論の全趣旨によると、右土地の現況は、当時、畑ないしそれに準ずるものであったと認められる)もので、これも合理的であると認められる。

これに対し、被控訴人は、仲介手数料について控訴人主張額を超える主張をしないが、造成費用については金五〇二万八九〇〇円である旨主張するところ、甲一一二号証中には右主張に沿う部分もあるが、右書証は本訴提起直前に被控訴人の従業員である高橋晴代が作成したメモにすぎず、右推計の合理性を覆すに足りない。また被控訴人は、その他の費用として金三五万五二〇〇を要した旨主張するが、右事実を認めるには足る証拠はない。

よって、西の京B物件の仕入価格は、金二四二五万〇一二二円であり、その面積は一五六六・九二平方メートルである(乙第一〇号証)から、一平方メートル当たりの単価は金一万五四七六円と認められる。

(二) 成立に争いのない乙第一〇号証及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

(1) その後、三番地の九の土地は、京都府長岡京市井ノ内西ノ京一四番の一四に、三番地の一〇の土地は、同所一四番の一五の土地に、五番地の土地は、同所一四番の一七に、二八番地の一〇の土地は同所一四番の二二にそれぞれ表示が変更された。

(2) 被控訴人は、昭和四五年六月二四日、一四番の一四土地を宅地に地目変更し、(一八八・〇〇平方メートル)、同月二五日、右土地から一四番の三二土地(七三・六〇平方メートル)を分筆し、同年七月四日、これを小畑悦啓に売却し、右分筆後の一四番の一四土地(一一四・四〇平方メートル)は、昭和四六年三月、河音久子に売却した((4)-1)。

(3) 被控訴人は、昭和四五年六月八日、一四番の一五土地に一四番の一七土地を合筆し、(一二五〇平方メートル)、同年一〇月一二日、右土地から一四番の三四土地(道路部分、一三〇平方メートル)を、同年一一月一九日、一四番の三五土地(一五〇・九〇平方メートル)を、同年一二月二日、一四番の三六土地(一三七・三六平方メートル)を、昭和四六年一二月二〇日、一四番の三七土地(八一・〇九平方メートル)を昭和四七年七月三日、一四番の四五土地(二七七・六三平方メートル)を、昭和四八年一月三〇日、一四番四六土地(二八・五二平方メートル)をそれぞれ分筆し、道路である一四番三四土地は、昭和四六年三月五日長岡町に寄付し、一四番の三五土地は昭和四五年一一月一九日安岡正泰及び安岡文子に売却し、一四番三六土地は昭和四六年四月三浦圭一に売却し((4)-4)、一四番三七土地は同年一二月京都府に売却し((4)-5)、一四番四六土地は昭和四八年一二月三浦圭一に売却した((4)-6)。

以上の分筆後の一四番一五土地の地積は四四三・四七平方メートルである。

(4) 被控訴人は、昭和四五年一一月一九日、一四番の二二土地を宅地に地目変更し(地積一二八・九二平方メートル)、昭和四七年七月三日右土地から一四番の四四土地(六八・九四平方メートル)を分筆した。分筆後の一四番の二二土地の地積は五九・九七平方メートルである。

(5) 被控訴人は、昭和四七年に分筆された一四番四四土地、一四番四五土地上に西ノ京マンションを建築し、同年からその分譲を始めた。

(三) 西の京B物件について、各年度のたな卸高を算出するについては、西ノ京マンションの敷地部分についてはこれを分筆した時点から別に扱うこととし、右時点で西ノ京B物件のたな卸資産ではなくなったものとして扱うこととする。また被控訴人は、西ノ京B物件の道路部分について、右のように昭和四六年三月に長岡町に寄付しているので、2の上羽町の物件についてしたように、有効宅地割合を求めて、期中に売却した面積を有効宅地割合で除したものを前期末たな卸資産から減じるという処理をしないこととする。

そうすると、西ノ京B物件について、昭和四五年の期末たな卸高は金二〇七七万五七六〇円、昭和四六年の期末たな卸高は金一三六一万二六九三円、昭和四七年の期末たな卸高は金八二四万九一七五円、昭和四八年の期末たな卸高は金七八〇万七八〇〇円となる。

(計算式) 24,250,122-〔15,476×(150.90+73.60)〕=20,775,760

20,775,760-〔15,476×(114.40+130.00+137.36+81.09)〕=13,612,693.4

13,612,693-〔15,476×(68,94+277.63)〕=8,249,175.6

8,249,176-(15,476×28.52)=7,807,800.4

8  西ノ京マンションの敷地について(原判決添付別表乙七の1の<5>、乙六の1の<5>参照)

(一) 7の(二)で判示したように、西ノ京マンションの敷地である一四番四四土地(六八・九四平方メートル)、一四番四五土地(二七七・六三平方メートル)の仕入単価は一平方メートル当たり金一万五、四七六円であるから、その仕入価格は金五三六万三五一七円である。

(二) 西ノ京マンションは五階建、二〇戸の分譲マンションであり、その敷地に対する持分は各二〇分の一である。

二の5、6で判示したように、西ノ京マンションは、昭和四七年に八戸が、昭和四八年に一二戸が売却された。したがって、西ノ京マンションの敷地について、昭和四七年期末のたな卸高は金三二一万八一一〇円、昭和四八年期末のたな卸高は零円となる。

(計算式) 5,363,517-(5,363,517÷20×8)=3,218,110.2

9  被控訴人が全京都建築協同組合から購入した京都府長岡京市調子二丁目二五番一四ないし同番一六の各土地(以下、「調子の土地」という)について(原判決添付別表乙七の1の<6>、乙六の1の<6>参照)

(一) 調子の土地の仕入価格について

被控訴人が調子の土地を昭和四五年に取得したことは当事者間に争いがない。控訴人は、調子の土地の取得価格の実額を把握できなかったので、推計により、これを金三三〇万四一七二円であると主張する。その推計の方法は次のとおりである。即ち、右取得は同業者からの造成済みの土地の取得であるので、取得の実額が把握できた事例のうち同業者からの造成済みの土地の取得である3の事例(<1>-2の丸岡益太郎からの取得、五九平方メートル、一〇六万八〇〇〇円)を類似事例とし、その一平方メートル当たりの取得単価金一万八一〇二円とその売却単価((1)-6と(1)-8の二例があるが、前者を採用)金三万六〇一六円を求め、後者を前者で除して売上差益割合を求め(一・九八九六)、調子の土地の売却単価(三万六二三七円、(6)-2の事例)を右売上差益割合で除した金一万八二一四円に、市街地価格指数を利用して時点補正して(右類似土地の取得は昭和四七年上半期であるのに、調子の土地の取得は昭和四六年下半期であるため)、取得単価金一万六九〇二円を求め、これに地積一九五・四九平方メートルを乗じて求めたのである。そして、右推計方法は合理的であると認められる。もっとも、3の事例の取得価格は金一七八万四〇〇〇円と認定すべきこと前判示のとおりであり、成立に争いのない乙第一一号証の一ないし三によると調子の土地の地積は一九五・六九平方メートルであるから、これらを前提に調子の土地Ⅷの取得価格を推計すると、金五五二万四一三三円となる。

(計算式) 1,784,000÷59=30,237.2

36,016÷30,237=1,19123

36,237÷1,1912=30,420.5

30,421÷1,638×1,520=28,229.4

28,229×195.69=524,133.0

これに対し、被控訴人は、調子の土地の取得価格は金五九一万八七〇〇円であり、その外の費用として金二四万一七五四円を要した旨主張し、その証拠として甲第五九号証中を提出するが、右主張、立証は、第二の三で判示したとおり準備手続の失権効により許されないのものであると解せられるから、右主張について判断しない。

(二) 控訴人は、昭和四六年に、二五番一四(六七・五七平方メートル)及び同番一六(六四・一六平方メートル)の各土地を売却し、((6)-1、2)、昭和四七年に同番一五の土地(六三・九六平方メートル)を売却した。

よって、昭和四五年期末のたな卸高は金五五二万一三三円、昭和四六年期末のたな卸高は金一八〇万五五二七円、昭和四七年期末のたな卸高は零円となる。

(計算式) 5,524,113-〔(67.57+64.16)×28,299〕=1,805,526.8

10  以上の検討の結果を総合すると、各年の期末のたな卸高は別表裁(当審)三記載のとおりであり、仕入については、昭和四六年が4及び5記載の土地でその金額が金七一六六万一八一二円、昭和四七年が3記載の土地でその金額が金一七八万四〇〇〇円となり、各年の土地の売上原価は、別表裁(当審)四の1ないし3に記載のとおりとなる。

四  必要経費について

1  土地、建築についての必要経費

(一) 控訴人は、土地、建築についての必要経費(利子割引料を除く)は、昭和四六年は金五一三万一八〇七円、昭和四七年は金六七一万四五〇二円、昭和四八年は金六八二万四九九七円である旨主張する。これは、控訴人が選定した比準同業者の経費率(昭和四六年六・一六パーセント、昭和四七年は七・六六パーセント、昭和四八年は九・四五パーセント)から推計したものである(その詳細は、原判決添付別表乙一〇参照)が、右比準同業者の選定については、被控訴人が居住している右京税務署の管内において本件係争年を通じて建売行を継続し、かつ青色申告書を所轄税務署長に提出している者のうちから、他の業種を兼業している者、本件係争年の所得(法人)税について不服審査又は訴訟係属中の者を除外し、被控訴人と事業規模、事業内容等が類似する同業者を選定したものであると認められる(証人元屋実の証言、弁論の全趣旨)から、右推計は合理的なものというべきである。

(二) これに対し、被控訴人は実額をもって経費額を主張するが、立証としては経費の一部についての書証を提出するのみで、経費の実額全体を把握し得る証拠を提出しないから、右推計方法の合理性を覆すには足りない。

(三) もっとも、各年の売上金額についての当裁判所の認定は、控訴人主張額とは異なるので、前判示の各年の売上金額に右経費率を乗じると、次のとおり、昭和四六年の必要経費は、金六四七万六〇一〇円、昭和四七年の必要経費は金九一七万六一四六円、昭和四八年の必要経費は金一八一九万五九三八円となる。

(計算式) 105,130,033×0.0616=6476010.0

119,793,025×0.0766=9176145.7

192,549,610×0.0945=18195938.1

2  家具についての必要経費

(一) 控訴人は、家具についての必要経費(利子割引料を除く)は、昭和四六年は金五七万八二六七円、昭和四七年は金八六万〇六三一円、昭和四八年は金六二万〇九九〇円である旨主張する。これは、控訴人が選定した比準同業者の平均所得率(昭和四六年は一四・〇八パーセント、昭和四七年は一五・三六パーセント、昭和四八年は一三・六九パーセント)を算出し、被控訴人の売上金額に右所得率を乗じて算出所得金額を求め、売上総利益から右所得金額を減じて必要経費を推計したものである(その詳細は、原判決別表乙一一参照)が、右比準同業者の選定については、被控訴人が居住している右京税務署の管内において本件係争年を通じて家具販売行を継続し、かつ青色申告書を所轄税務署長に提出している者のうちから、他の業種を兼業している者、本件係争年の所得(法人)税について不服審査又は訴訟係属中の者を除外し、被控訴人と事業規模、事業内容等が類似する同業者を選定したものであると認められる(証人元屋実の証言、弁論の全趣旨)から、右推計は合理的なものというべきである。

(二) これに対し、被控訴人は実額をもって経費額を主張するが、立証としては経費の一部についての書証を提出するのみで、経費の実額全体を把握し得る証拠が提出されないから、右推計の合理性を覆すには足りない。

(三) よって、家具についての必要経費は、控訴人主張どおりと認めるのが相当である。

五  以上の検討の結果を総合して、被控訴人の各年度の総所得金額を算出すると、別表裁(当審)四の1ないし3記載のとおり、昭和四六年が金一八〇八万七一四五円、昭和四七年が金八二八万七七四九円、昭和四八年が金二六八九万三九〇七円となる。

第五結論

そうすると、控訴人の被控訴人に対する本件更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(但し、昭和四七年分は各処分とも昭和六〇年三月六日付減額更正処分によるもの、昭和四八年分は各処分とも裁決による一部取消後のものをいう)は、昭和四六年分及び昭和四七年分については右認定の被控訴人の総所得金額の範囲内でしたものであるから、被控訴人の所得を過大に認定した違法はなく、その他被控訴人が主張する違法事由が認められないから、被控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきであり、昭和四八年分については、総所得金額二六八九万三九〇七円を超える部分は被控訴人の所得を過大認定したもので違法であるが、その他の違法事由は認められないから、被控訴人の本訴請求は右部分の取消を求める限度で正当であり、その余は失当として棄却すべきである。

よって、控訴人の本件控訴に基づき、被控訴人の昭和四六年及び四七年の所得税について控訴人がした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に関する部分について原判決を取り消した上、被控訴人の請求を棄却、被控訴人の本件附帯控訴に基づき、昭和四八年の所得税について控訴人がした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に関する部分について、右と異なる原判決を右のとおり変更し、その余の本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九六条、八九条、九二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山中紀行 裁判官 横山敏夫 裁判官 井戸謙一)

別表乙(当審)一の1

(控訴人主張額の内訳-46年度分)

<省略>

別表乙(当審)一の2

(控訴人主張額の内訳-47年度分)

<省略>

別表乙(当審)一の3

(控訴人主張額の内訳-48年度分)

<省略>

別表裁(当審)一

平均的な土地一平方メートル当たりの売買価格及び売買差益率表

<省略>

(取得原価表)

<省略>

別表裁(当審)二

土地建築売上集計表

<省略>

別表裁(当審)三

土地たな卸明細表

<省略>

別表裁(当審)四の1

総所得金額の内訳(昭和46年分)

<省略>

別表裁(当審)四の2

総所得金額の内訳(昭和47年分)

<省略>

別表裁(当審)四の3

総所得金額の内訳(昭和48年分)

<省略>

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